傾きマンション事件が起こるのは必然だった 民間建設工事にも問われる発注者責任
「やはり起きてしまったか」
居住者の方々には大変申し訳ないが、第一報を耳にしたとき率直にそう思ってしまった。
「やはり起きてしまったか」と思わせる理由とは?
横浜市都筑区の大型マンション「パークシティLaLa横浜」(全705戸)で起きた施工不良事件。建物を支えるための基礎工事で、杭が必要な強度を確保できるための深さまで到達していなかったり、杭を固定するためのセメントの量が不足していたりするなどの問題が発覚した。実際に全4棟(南棟、中央棟、西棟、北棟)のうち、西棟は2センチメートル超、傾いてしまっている。
「パークシティLaLa横浜」は三井不動産レジデンシャルが2006年に販売を開始。同じグループの三井住友建設が元請けとなって工事を進め、2007年12月に竣工した。直接的な因果関係はまだ明確に言い切れないものの、現時点で大きな問題となっているのは、三井住友建設の2次下請けとして杭打ち工事を請け負った旭化成建材によるデータ改ざんだ。
旭化成建材が過去10年間に基礎工事を行った物件は、全国で3040件。今回傾いたマンションの杭工事でデータを改ざんしたとされる現場担当者がかかわったのは41件とされ、今後の調査結果次第では問題が大きく広がる可能性もある。
そうした意味では、10年前の2005年に発覚した「耐震強度データ偽装事件」を彷彿とさせる。建築確認申請の段階でデータ偽装を見抜けずに耐震強度不足のマンションが建設・販売され、大きな社会問題となった。1人の構造設計士による犯行とされ、「姉歯事件」とも称されたあの事件だ。
建築確認とは、建築工事に着工する前に、その計画が建築基準法をはじめとする法令や各種の基準を満たしているかを審査すること。姉歯事件を受けて、国は建築確認申請手続きを大幅に厳格化するため、建築基準法を改正。消費者保護のために分譲事業者の資力を担保する「住宅瑕疵担保履行法」も2007年に制定され、2009年10月から新築住宅に義務付けられた。
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