「参政党・さや氏の“生音声”を使用」人気ラッパーが発表した、“お母さん演説”入り《怒りのラップソング》は、著作権法違反になる?
結論からいうと、公開して行われた政治上の演説は、それを利用しても著作権侵害にはなりません。著作権法第40条第1項は、次のように定めています。
「公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第41条第2項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。」
原則として、口頭で伝えるスピーチ、講演、セミナーなどは、思想または感情を独自のクリエイティビティを持って表現したものである場合、「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」に該当し、著作権法で保護されます。
もし第三者がこれらを利用するには、著作者の許可や引用(著作権法第32条)などの利用要件(以下、「利用要件」とする)を満たすことが必要です。
……ということであれば、「お母さんにしてください」といった独特なフレーズを使用しているさや氏の演説も、著作権法で保護されそうな気がしますよね。
ですが、著作権法は例外として、公開された政治上の演説については自由な利用を認めている、ということになります。
これはなぜかというと、日本では民主主義の下、自由な言論を通じて、国民が社会の方向、あり方を決めていくという手続きが採用されています。政治的な言論はなるべく広く知れ渡るようにして、国民の判断材料を広く提供することが民主主義にとって有益であると考えられているからです。

とはいえ、「著作権法違反」になる危険性も
「では政治上の演説は、どのように利用してもOKか」というと、そうではないので、注意が必要です。
自由に利用できる対象は「公開された政治上の演説」に限定されています。「公開されず行われた政治上の演説」や「公開されていても、政治上の演説ではないスピーチ等」は、原則通り著作権の保護がおよびます。
また、自由に利用できる対象は「公開された政治上の演説そのもの」であり、「第三者が撮影した、公開された政治上の演説」ではありません。
そのため、自分自身で撮影をしておらず、第三者が撮影をしたもの(たとえばメディアが撮影して公開された政治上の演説など)を利用する際には、原則通り著作権法の保護がおよぶことを前提に、著作権者の許可を得る、または利用要件を満たす必要があります。
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