【仕組み③】ロスを防ぎ、原価と人件費を最適化する仕掛け
米の価格変動に伴って、品種や品質を落とさないでもいいよう、原価率の改善にも着手した。象印食堂の原価率は28~29%。そう定めたうえで、「季節ごとに象印が決めるコンセプト」に基づくメニューをコンペ形式で提案してもらうことで、原価率を一定でコントロールできる体制を構築したのだ。
メニュー提案をするのは各店の料理長だ。最初は慣れなかったが、今は自分のメニューが採用される喜びが、モチベーションにつながっている。
「完成度の高いメニューが提案されたときは、食いしん坊揃いの象印チームがかなりのリアクションで喜びます。それもモチベーションになっているかもしれません」
同じ方式で、どうしても余ってしまうごはんのアップサイクルの取り組みも行っている。「おこげにして、翌日の料理の一品にする」「麹をつけて、甘酒を作る」などのアイデアが採用され、フードロス削減に役立っている。

ちなみに、家電製品をつくるうえでは、ロスが発生することは滅多にないそうだ。そのため、「日々余った米を無駄にせず、利用してなにかできないか」と頭をひねった結果だった。
家電メーカーの知見が生きたところは他にも…
また、人件費率も目標を決めて、なるべく上回らない仕組みも作った。毎週店長が人件費のデータを提出。目標を上回ったり、下回ったときは原因も添えてもらい、改善のためのディスカッションをしているという。
ただし、闇雲に「原価率や人件費率を下げる」ことを良しとはしていない。それは象印食堂の「FLコスト」(売り上げに対して、食材原価と人件費がどれだけかかっているかを示す数値)にも表れている。55~60%が平均と言われる中、60%とごくごく平均的な水準なのだ。米の品質と米を炊く手間を考えると、そこが限界だという。
「仕組み化の工夫で乗り切れないときは、品質の高い食事やサービスに対しての対価として、料金をありがたくいただく精神で経営しています。原料の値上げがあれば、世間の値上げに合わせて、適切な値上げを行っています」
あくまでも一番の目的は儲けることではなく、「炎舞炊き」のごはんのおいしさに感動してもらい、購入動機をつくることだからだ。
【仕組み④】スタッフが自らを育てる「象印食堂ごはんマイスター制度」
2024年からは、サービスレベルが自然に向上する仕組みも構築した。取り入れたのは、「象印食堂ごはんマイスター制度」という階級システムだ。象印食堂では、ごはんや炊飯器について客から質問されることがよくある。しかし、委託先のダイナックスのスタッフやアルバイトは答えられないこともあった。
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