「ランチ1人2100円~」でも大盛況!象印マホービンが運営する「米が美味すぎる食堂」。連日満席を実現した4つの仕組み化

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【仕組み①】“食べ比べ”を推進する盛り方の設計

まずは、ごはんの盛り方だ。象印食堂は、「ごはん食べ放題」の店のため、スタッフはごはんを大盛りにする傾向があった。しかし、最初からお茶碗いっぱいにごはんをよそってしまうと、お腹がいっぱいになり、せっかく用意している3種類ごはんの「食べ比べ」がしづらくなる。前編でも紹介した通り、食べ比べることで客は「自分好みのごはん」を発見しやすくなる。合計121通りもの炊き方ができる「炎舞炊き」の購入につなげる導線の1つとなっているのだ。

客側からも、「いろんな種類を試したいのに、お腹いっぱいになってしまって試せない」「もっと少なくしてほしい」という意見が聞こえていた。そこで、ごはんは普通のお茶碗の半分の量を盛るスタイルをデフォルトに決めた。一方で、「ただよそうだけ」ではなく、「おいしそうに盛る」ことにもこだわり、従業員みんなで「80グラムをふんわりおいしそうに盛り付ける」研修も行った。

3種類のご飯
「お茶碗一杯80グラム」をふんわり盛り付けたごはん(写真提供:象印マホービン)

【仕組み②】接客と厨房をつなぐ“司令塔”の動線改革

スタッフが無駄なくスムーズに動けるよう、動線も改善。それに伴い「司令塔」ポジションも誕生した。

象印食堂はオープン当初から、「店に入らなくても、通路から炊飯器が並んでいるのが見える」のが家具配置の鉄則となっている。ただ、キッチンは店の奥にあり、この炊飯器の場所とは離れている。そこで、炊飯器をできるだけキッチンと近づけつつ、店内、客席全体が見える位置に配置した。

その近くに「ごはん担当者」が立ち、客にごはんをよそい、手渡す。なおかつ、ごはんの量や炊き上がり、「釜が空になった」などの状況をホールメンバーやキッチンスタッフに素早く連携できる形にしたのだ。ごはん担当者は、野球で言えばキャッチャーのような、司令塔の役割を果たしている。

事故の再発を防ぐ、環境からの改善

家具も変更した。あるとき、スタッフが客に味噌汁をかけてしまうという事件が起きたことがきっかけだ。

そのスタッフは、「次から気をつけます。すみません」と謝罪したが、北村さんはそこでおしまいにしなかった。質問を重ねて、「何がどうなってかけてしまったのか」を詳しく聞いた。すると、「制服が七分袖で、その袖口に椅子の背もたれの角が入って引っかかってしまった」と言ったという。

聞いてすぐは、「そんなことってあるもの?」と訝しく思い、他のスタッフにも尋ねたそうだ。すると、他のスタッフも袖に入った経験があることが分かった。ただ、それを「危険」とは認識せず、自分が悪いと思い込んでいたのだ。

「一度起こってしまったトラブルは、もう一回起こる可能性があります。再発防止には、個人の『注意します』『がんばります』に委ねるのではなく、環境の変更やシステム化で取り除かなければいけないと思っています」

椅子
提供時にスタッフの袖口に入ってしまい、廃棄された椅子(写真提供:象印マホービン)
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