がん患者の無再発生存率を上げる「運動」のやり方が明らかに――世界的に有名ながん学会と科学雑誌で同時に発表《医師が解説》

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アメリカ臨床腫瘍学会の統括医療責任者も最高レベルのエビデンスと称賛し、「治療中・治療後の運動の重要性についての考え方に大変革をもたらす」との談話を公表しました。

この28%の再発リスク低下、37%の死亡リスク低下という効果の大きさは、医師からみると、かなり大きな差です。

これより効果が小さい抗がん剤でも新薬として承認されますが、驚くほど高額で、しかも命を危険にさらす強い毒性が出ることもあります。運動が抗がん剤の代わりになるわけではありませんが、抗がん剤で引き起こされるようなきつい副作用がなく、費用も安いことも大きな利点です。

この研究が画期的なのは、医学史上初めて運動によって、がんの再発と死亡を防ぐ効果があると明確に証明した点です。

運動療法は患者の足腰の力を改善し、心肺機能を向上させ、メンタルや体調を改善し生活の質を高めます。

もちろん、進行がんの治療では抗がん剤などが必要になるのは、従来とかわりません。しかし、がんの再発を防ぐために、従来の治療方法に加えて運動を積極的に取り入れることが長生きにつながると、断言できるようになったわけです。

今回の研究対象となった、手術と抗がん剤治療を受けた大腸がん患者では、その約30%が最終的に再発を経験します。

患者さんからよく受ける質問が、「がんの再発を防ぐのにどうしたらよいでしょうか?」です。そして、今回の研究結果から導き出されたのが、トレーナーからのサポートを3年間受けながら、「週4回、1回45分の早歩き」に相当する有酸素運動を定期的に行うというのが、その答えになるのです。

この研究結果は、毎年4万人以上の研究者・臨床医が参加する世界最大のがん学会で発表され、同時に最高峰の医学誌に掲載されたことで、今後の世界のがん治療ガイドラインをも変える可能性があると思います。

運動はなぜがんの再発を防ぐのか

がんに対して運動が有効ではないか、という仮説は、実は2006年頃から発表されるようになっていました。

しかし、これまでの研究はエビデンスの低い観察研究という方法だったため、単に体力のある患者が運動しているだけではないのか、がんの悪性度が低かっただけではないのか、といった異論があり、運動の有効性には諸説ある状態でした。

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