がん患者の無再発生存率を上げる「運動」のやり方が明らかに――世界的に有名ながん学会と科学雑誌で同時に発表《医師が解説》
そんななか、この常識を大きく変える最新の研究結果が発表され、話題を呼んでいます。
今年6月、シカゴで開催された世界最大級の医学会の1つ、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会と、世界最高峰の医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』で同時に、がん医療の未来を変える画期的な研究結果が発表されました。
<週に何回・何分・どのようにやるか>決められた運動プログラムを取り入れることで、がんの再発と死亡リスクが大幅に減ることが、初めて科学的に証明されたのです。
再発・死亡リスク低下を実証
今回の研究を主導したのは、カナダ・クイーンズ大学など、欧米の多国籍チームです。
2009年から2023年という長期にわたって、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、カナダ、イスラエルの6カ国55施設で、手術後に抗がん剤治療を終えた大腸がん患者889人を対象に、10年以上におよぶ大規模な臨床試験が実施されました。
被験者は、健康的なライフスタイルに関する冊子による情報提供のみを受け取る群(444人)と、冊子に加えて3年間の運動プログラムに参加する群(445人)に分けられました。
運動群の被験者は、個人に合わせた身体活動プログラムを提案・支援を受けるために、パーソナルトレーナーや運動指導に関する専門資格を持つ健康コーチと、月2回(のちに月1回)の面談と指導を受け、週3〜4回、45〜60分の早歩きに相当する運動を継続しました。
どのような運動を選ぶかは本人の自由で、カヤックやスキー、水泳、自転車など、多様な運動メニューが用意されました。
結果は驚異的でした。5年後の運動群の再発や新たながんの発症リスクは28%、8年後の相対的な死亡リスクは37%も低下したのです(※外部配信先ではグラフを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

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