「こんなに議席が取れるのはおかしい」「何か裏があるのでは」との声も出ているが…参政党躍進を「海外勢力による工作」で片付ける“危うさ”

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けれども、この「認知戦」を土台にした「参政党支持層はロシアのボットに踊らされている」というわかりやすい物語は、参政党の大躍進に対する釈然としない思いを抱えていた人々の心をものの見事に動かした。

今もなお、真偽不明の影響工作の神話は独り歩きしており、それをうのみにした人々が「海外からの選挙介入が本格化している」「日本がやばい」「日本人はハメられた」等々と半ば戦々恐々としている。

言うまでもなく、これも陰謀論である。陰謀論研究の第一人者である政治学者のジョゼフ・ユージンスキは、「適切な認識論的権威がまだ調査を行なっていない、あるいは結論に到達していないケースにおいて、真実を確認しないまま、これは陰謀であると主張するのも陰謀論だ」と述べた(『陰謀論入門 誰が、なぜ信じるのか?』北村京子訳、作品社)。

ユージンスキはその好例として、ドナルド・トランプがロシアと共謀して2016年の大統領選挙を不正に操作したと主張する説を示す。「ムラー報告書の公表以前には陰謀論であり、またムラーによる調査結果を考慮したうえでも、今後適切な認識論的権威によって報告書の内容が覆されない限りは、陰謀論であり続ける」と。

いくら排外主義をあおる投稿が急増したところで、それが本当に人々の支持傾向を変え、選挙結果までを変えたかどうかは、信頼に足る複数の調査機関などの検証を経ない限りは、「日本人が認知戦でコントロールされて、極右政党に誘導されている」という認識は陰謀論の域を出ないのだ。

自分たちの国の民主主義が蝕まれている…?

前出の議論に戻るが、「偽の情報が拡散され、それが政党の支持拡大や選挙結果に影響を与えているかもしれない」という情報への暴露は、自分たちの国の民主主義が蝕まれているような感覚を強化する方向に作用する。いわゆる「パーセプション・ハッキング(Perception Hacking)」による効果だ。

偽の情報に影響を受けた事実がなかったとしても、それがあたかも影響したかのように報道されることによって、情報工作を行う側は同じ効果を得られることなどを指す専門用語である。「騙す必要はない。騙されたかもしれないと思い込ませればよい」というわけだ。最初からこの暴露による政治的な混乱を狙っている場合すらある。

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