《ミドルのための実践的戦略思考》マイケル・ポーターの『競争の戦略』で読み解く部品営業担当者の悩み

もう少し詳しく説明しましょう。この「5つの力」と儲かりやすさの関係性は、「売上−コスト=利益」という数式を頭に入れて考えると理解しやすくなります。つまり、まず「買い手」との力関係で優位に立てる構図であれば、「売上」が立ちやすくなります。また、逆に「売り手」との力関係でも優位に立てれば、「コスト」は低く抑えやすくなります。こうして横のラインを見ることにより、「売上−コスト」の関係性が把握でき、真ん中のラインにどれだけ「利益」が溜まりやすくなるのか、ということが分かってきます。

一方の縦のラインは、その溜まった「利益」をどうやって配分するのか、ということを把握するものです。つまり、「業界内の競争」や「新規参入」の脅威が高ければ、真ん中に溜まった「利益」のパイを多くのプレイヤーと分かち合わなくてはならなくなる、という構図になるわけです。また「代替品の脅威」が強ければ、そもそもの真ん中にあった「利益」のパイが根こそぎ奪われることになる、ということです。

「競争戦略」と言うと、多くの人が、競合とどう戦うか、という近視眼に陥ってしまう中、ポーターは、この「5つの力」を通じ、「業界全体を捉えろ」というメッセージを発しました。このメッセージは、今も不変に多くのビジネスパーソンにヒントを与えるものと思います。

■解説:田中さんは何を考えるべきなのか?

さて、田中さんが置かれたシチュエーションを早速、ポーターの「5つの力」で整理してみましょう。

どうやら田中さんは視点が「競争相手(業界内の競争)」「買い手」の2 Forceのみに限られていたようです。例えば、「顧客のニーズに対して、競合よりもいち早く適切な提案を行う」という田中さんの勝ちパターンは、まさに田中さんが「競争相手」と「買い手」のみを見ていたことを表しています。もちろん、これは「お客様のニーズを満たすために、競合にどうやって勝っていくか」、というビジネスの基本であり、自然な成り行きではあります。

しかし、それに加えて、本来は、
・「果たしてサプライヤーの中で圧力が強いプレイヤーはどこだろうか。それを弱めるにはどうしたらいいか」
・「この業界の参入障壁は高いのか。参入障壁を築くとしたら何があるのか」
・「うちの部品を完全に取って代わる商品があるとしたら、どんなことが考えられるのか。それは防ぐことが出来るのか」
ということも、真剣に考えなくてはいけませんでした。常日頃からそうしたことを考えていれば、中国から新たなライバルが参入してきたり、原料価格が突然に引き上げられたりといったことに、あれほどには慌てずに済んだはずです。

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