日本発の「政策提言AI」が警告! 「地域分散」か「グリーン成長」か 「地球社会の未来シナリオ」は「2034年までの選択」がカギを握る

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言い換えれば、グローバル経済あるいは「拡大・成長」を基調とする“グローバル資本主義”がさらに拡張していけば、そこに有限な資源やエネルギーをめぐっての争奪戦やさまざまな紛争が生じるのは不可避ともいえ、それゆえ国際的な協力行動を大幅に高めたとしてもなお国際紛争は微減にとどまる、ということをこのシナリオ2は示しているとも理解できるだろう。

一方、「地域分散・成熟シナリオ」(シナリオ1)は、シナリオ2のようにはグローバル経済の拡大が進まず、むしろ経済の成熟化を是認したうえで、地球上の各地域が分散しつつ一定の自律的均衡や環境保全そして平和と安寧を実現していくような姿である。それは「ローカリゼーション」、すなわちローカルな地域レベルでの経済循環(いわゆる地産地消)や持続可能性を重視しつつ、ナショナル、グローバルへと積み上げていくという地球社会の未来像ともいえる。

あるいはそれは、老子が唱えた「小国寡民」の理念、すなわち「小さな規模の共同体が互いに過度に侵食せず共存していくことが望ましい」という考えに近い社会像ともいいうるだろう。

また、ヨーロッパあるいは環境政策の分野においては近年、「グリーン成長(green growth)」と「脱成長(degrowth)」という対比をめぐる議論がなされており、この話題は冒頭に掲げた拙著(『科学と資本主義の未来』)でも論じたが、このシナリオ1(地域分散・成熟シナリオ)はシナリオ2に対して、より「脱成長」に親和的な未来像と理解することもできる。

地域分散・成熟シナリオという選択肢

以上の「グリーン成長・協調シナリオ」(シナリオ2)と「地域分散・成熟シナリオ」(シナリオ1)のいずれを望ましい姿とするかは、どの政策課題ないし価値を優先し、どのような社会像を望ましい姿と考えるかによって決まるものであり、一義的な結論が導き出せる性格のものではない。

ただし、ここで私見を述べると、私自身はこの2者のうち、後者の「地域分散・成熟シナリオ」(シナリオ1)がより有望な未来像ではないかと考えている。

その理由は2つある。

第1に、従来のような「経済の限りない拡大・成長」を志向する社会システムのあり方は、種々のレベルでの格差拡大、有限な地球環境の崩壊などさまざまな面で限界に達しており、したがって(事後的な環境保護や格差是正といった弥縫<びほう>策ではなく)そうした方向そのものを根本から変革していくことが必要で、(私自身がこれまで提起してきた)環境・福祉・経済が調和した「定常型社会=持続可能な福祉社会」と呼びうる社会像を実現すべきであることだ。

第2に、現在の世界の状況を見ると、まず何より国際的な紛争の削減を図っていくことが最優先の課題と考えられ、その意味で(国際紛争が際立って減少する)シナリオ1が特に重要と考えられることである。

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