幼少期から刷り込まれる「石の上にも三年」の呪縛…なぜ人間だけが"やめる"ことに罪悪感を覚えるのか
ですから、わたしたち人間が「やめる」ときに、脳の中で何が起きているのかというメカニズムがわかれば、将来的に依存症患者に特定の行動をやめさせることができるかもしれないわけです。
また、ヴァンダービルト大学のティロ・ヴォメリスドルフ博士は、脳があるタスクに慣れてしまい、同じ指示を出せば同じ結果が得られるということを確信すると、神経細胞の活動が低下する一方で、新たな難しいタスクを課すと、再び活性化するということを突き止めました。
つまり、わたしたちの脳は、新たな難しいことに挑戦しようとすると活性化するようにできているということなのだと思います。
ここからもやらないほうがいいことをやめて、やるべきことを新たに始めるほうが、人間の生き方としてより自然であるということがわかるでしょう。
文化面から「やめる」ことを考える
「やめる」ことがわたしたちの人生をより豊かなものにしてくれるという可能性は、科学の世界で証明されつつあるようです。
しかし、世の中の多くの人が、やめることを躊躇し、悩んだ挙げ句、やめないことを選んでいるのはなぜでしょうか。
やはり、「やめることを悪とする文化」、言い換えれば「忍耐を美とする文化」が、わたしたちに影響を与えているからだろうと思います。日本では、忍耐を美とする価値観が、とても長い間、信奉されてきています。
例えば、こんなことわざを聞いたことがあると思います。
「石の上にも三年」
「継続は力なり」
「雨垂れ石を穿(うが)つ」
「塵も積もれば山となる」
日本語には、我慢して続けていれば報われるということを示すことわざがたくさん存在しており、わたしたちは子どもの頃からそれらをずっと聞きながら生きてきているのです。
ですから、「やめる」ほうが人生が豊かになるよと言われても、ほとんど反射的に、「本当? 続けたほうがいいことがあるんじゃないかな?」と思ってしまうのです。
この傾向は、じつは日本に限ったことではありません。
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