幼少期から刷り込まれる「石の上にも三年」の呪縛…なぜ人間だけが"やめる"ことに罪悪感を覚えるのか
過労死するまで頑張ってしまう人たちは、人間が社会的な動物であるがゆえに、他人の目を気にしたり、「やめる=失敗」という根性論にとらわれてしまったりすることで、どうしてもやめられないという状況に陥ってしまっているともいえます。
人間が「やめる」ことが苦手な理由
動物たちは「やめる」ことが得意なのに、人間が「やめる」ことが苦手な理由は他にもあると思っています。
例えば、ホメオスタシスです。これは、恒常性維持と呼ばれる人間の体に備わっている機能で、体が急激な変化を起こさないように、脳が正常だと認識している状態を維持しようとするもの。
ぼくは、このホメオスタシスは、人間の心にも働いていると思っています。つまり、人間は、環境が急激に変わることを本能的に嫌い、変化を避けようとしているのではないかということです。多くの人が変化しようとしないのは、このためではないでしょうか。
また、行動経済学でいうサンクコスト効果も、「やめる」ことを難しくしています。せっかくここまで頑張ったのだから(コストを投じたのだから)、ここで諦めるのはもったいないという心理です。
どうすれば「やめる」ことができるようになるかを学ぶ前に、こういった人間が「やめる」ことを阻害している要因について認知しておきましょう。
まずは、これらを正しく認知することが、「やめる」ことへの心理的な障壁を低くしてくれるはずです。
「やめる」ことが、わたしたちの人生をより豊かなものにしてくれるかもしれないということは、じつは学問の分野でも研究されています。
『QUITTING やめる力 最良の人生戦略』(ジュリア・ケラー著、日本経済新聞出版)という本を読むと、科学者たちが「やめる」ことのメカニズムを解き明かそうとしてどんな研究がなされているかがよくわかります。
そもそも、なぜ科学者たちが「やめる」ことを研究しているかというと、まず、「依存症患者を救う」ことができるからです。依存症の患者たちは、アルコールにせよ、麻薬にせよ、何かをやめることができない人たちです。
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