「私の仲間5人も自ら命を絶った」 元起業家が語る「成功の罠」 日本の起業家が直面する「死のリスク」と「セーフティネットの欠如」

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起業家
2種類の起業家タイプが抱える「光と闇」とは(写真:塩大福/PIXTA)
現代社会において「起業家」は憧れの存在であり、成功すれば巨万の富と名声が手に入るとされている。しかし、その華やかなイメージの裏で、多くの起業家が深刻な精神的危機に直面し、中には自ら命を絶つケースも少なくない。なぜ、成功への階段を駆け上がるはずの彼らが、精神的に追い詰められてしまうのか。自身も起業家であった作家の平川克美氏が、ニール・シーマン著『起業中毒:起業家の「加速する脳」を突き動かす刺激的かつ破壊的な衝動』を、実体験も交えつつ読み解く。

当事者研究でもある専門家による分析

本書は、メンタルヘルスの研究者であり、起業家でもあるニール・シーマンが、多くの起業家が成功へのタイトロープの上で、精神的な危機に陥り、薬物やアルコールに依存し、自ら死を選ぶほど追い詰められてしまう道筋を追ったドキュメントである。

起業中毒
『起業中毒: 起業家の「加速する脳」を突き動かす刺激的かつ破壊的な衝動』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

そして起業家が陥った陥穽から起業家を救いだすために何ができるのかを模索している。

本書を読んで、意外に思ったことのひとつとして、欧米では精神科医・神経科医であり同時に起業家であり投資家であるという人がかなりの数、存在しているということだった。

その理由はよくわからないが、本書のような医師によるスタートアップビジネスへのアプローチが日本でほとんど見られなかったのは、医者は安定的かつ高収入で、ステータスの高い職種であり、リスクを冒してまで冒険的な新規事業に参入してゆく必要が感じられないということかもしれない。

評者(私)は、2000年に前後して秋葉原を中心に幾つかの新規事業を手がけたが、当時の仲間の一人は歯医者だった。しかし、それはかなり珍しいケースだったと言えるだろう。

我が国では、起業家というのは、有名大学を出て大企業に勤めるか医者や弁護士のような専門職に就くといった、あらかじめリスクを回避する類の人々(良い意味で使っている)とは、そのメンタリティにおいても、社会的評価においても、かなり異質な存在であるように思える。

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