「私の仲間5人も自ら命を絶った」 元起業家が語る「成功の罠」 日本の起業家が直面する「死のリスク」と「セーフティネットの欠如」

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起業家とはどういったひとたちで、そういう悩みを抱え、どんなリスクと向き合っている存在なのかを論じている本書の臨場感は、医師自らが起業家的な精神の持ち主であり、リスクテイカー当事者でもあるという事業から来るのだろう。

アマゾンが変えた流通の常識

起業家という言葉が、急速に人々の耳目を集めるようになったのは、おそらくは2000年前後からだろう。90年代の後半は、コンピューターテクノロジーが以後のビジネスを一変するだろうという期待が金融の世界のみならず産業界全体に横溢していた。

コンピューター先駆者たちが、進歩の一つの帰結点としてウェブブラウザを完成させて以後、世界の距離的な壁を一挙に縮減させることができるこの技術を、ビジネスの世界が見逃すはずはなかった。

アマゾン・ドットコムが、ネットを使った書籍販売を開始したとき、誰が今日の爆発的な拡大を予測できただろう。事実、当初は多くのベンチャーキャピタルも、その成功には疑問を抱いたはずである。

ただ、西海岸にある大手ベンチャーキャピタルは、このビジネスモデルに大金を投入した。そこには、このビジネスが流通の革命であることを見抜いていた創業者ジェフ・ベゾスの成功への信念と、そこに新しいビジネスの潮流を見抜いた幾人かのベンチャーキャピタリストの慧眼があったことは確かである。

ベンチャーキャピタルが大金を投資したにもかかわらず、当初は赤字続きでビジネスはあまりパッとせず、そのまま塩漬けになってしまうのではないかと危惧するむきもあった。

しかし、在庫を持つことなく全米の発行元、書店にある出版物の膨大なリストだけで、注文を受けるシステムは、それまでの書籍販売の頼りない流通システムを一気に変えてしまう革命性を秘めていたのだ。

アマゾン以前、日本の日販やトーハンのような大手取次のなかったアメリカのマーケットでは、版元と書店は直接契約するという、か細い流通に頼るしかなかった。

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