宇宙は数え切れないほどたくさん存在している! MARVEL映画などフィクション作品で頻出の《マルチバース》、その理論を徹底解説

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このような考察からも、私たちは6次元の空間がコンパクト化され、4次元時空しか感じられない宇宙に、たまたま住んでいるのかもしれません。

マルチバースを構成する「泡宇宙」

これら6次元の形が違った宇宙がどのようにできていくのかは、一般相対性理論を使って計算することができます。それによると、これらの宇宙は「泡」のような形で次々に生まれていくことがわかります。

まず、真空のエネルギー密度が非常に大きな宇宙があったとすると、そのような宇宙では急激な加速膨張が起きています。そしてその中に別の宇宙が、あたかも沸騰した水の中にできる水蒸気の泡のように、泡状に次々とできていくのです。

95%の宇宙
(画像:『95%の宇宙』より)

このプロセスによりできる「泡宇宙」の種類はさまざまです。また、このようにして「親宇宙」から生まれた「子宇宙」の中にも、また多くの「孫宇宙」が泡のように生まれていきます。

95%の宇宙 解明されていない“謎”を読み解く宇宙入門 (SB新書 695)
『95%の宇宙 解明されていない“謎”を読み解く宇宙入門』(SB新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そして、私たちの宇宙は、このようにして生まれた無数の宇宙のうちの一つなのです。

マルチバース理論の証拠を得るのは簡単ではありませんが、この理論が、観測されたダークエネルギーの値を説明できる唯一の理論であることは確かです。また、量子力学と一般相対性理論を融合するという、ダークエネルギーとは全く関係のない動機で構築された理論から自然に導かれる帰結というのも魅力的です。

さらには、将来の観測で探索できる可能性もなくはありません。例えば、もし私たちの宇宙の過去のインフレーションがあまり長く続かなかったならば、私たちの宇宙と他の宇宙が衝突した痕跡を、宇宙マイクロ波背景放射の中に見いだせるかもしれないことが指摘されています。

この他にも、泡宇宙の内側の世界は負の空間曲率を持っている(ので、もし将来の観測で正の曲率が見つかれば、泡宇宙を棄却できる)など、いくつかの観測的な探索の可能性が考えられています。

なお、もしマルチバース理論が正しければ、私たちの宇宙がどのようにして始まったかの謎は解決します(親宇宙の中に泡の生成を通して生まれます)。しかし、この場合でも、最初の宇宙がどのようにして生まれたのかという「時空生成の謎」は残ります

野村 泰紀 カリフォルニア大学バークレー校教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のむら やすのり / Yasunori Nomura

1974年、神奈川県生まれ。バークレー理論物理学センター長。ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構連携研究員、理化学研究所客員研究員を併任。主要な研究領域は素粒子物理学、量子重力理論、宇宙論。1996年、東京大学理学部物理学科卒業。2000年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。米国フェルミ国立加速器研究所、カリフォルニア大学バークレー校助教授、同准教授などを経て現職。著書に『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』(星海社)、『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』(講談社)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事