宇宙は数え切れないほどたくさん存在している! MARVEL映画などフィクション作品で頻出の《マルチバース》、その理論を徹底解説
近年、真空のエネルギー密度の他にも、私たちが住んでいる宇宙は、たくさんの物理パラメータが人間などの生命の存在に都合のいい値になっていることがわかってきました。
その一つの例は、ヒッグス粒子の質量です。これに関するパラメータも、理論的に自然な値より三十数桁ほど小さくなっていることがわかっています。そして、もしこのパラメータが観測された値より数倍大きければ、そのような宇宙には私たちの宇宙のような多くの種類の元素は存在せず、水素だけになってしまうことが計算により示せます。
さらには、クォークやレプトンの質量や混合角のいくつかも、その観測された値からある程度ずれると、私たちの宇宙にあるような複雑な構造をつくることはできなくなることがわかっています。
これらの謎も、もしたくさんの種類の宇宙があり、それらの宇宙でパラメータの値が違っているならば、真空のエネルギー密度の場合と同じようにして理解することができます。つまり、無数の宇宙が存在するマルチバースで生命が誕生する条件が揃っている奇跡的な宇宙でのみ生命が生まれ、そのため、その生命がこれらのパラメータを計測したときには、生命にとって非常に都合のいい「奇跡的な値」を見いだすことになるというわけです。
超弦理論とマルチバース
では、このマルチバース理論は超弦理論(超ひも理論)と何の関係があるのでしょうか? 実は、超弦理論には、たくさんの異なる宇宙をつくるメカニズムが自動的に入っていたのです。
超弦理論では、理論の無矛盾性から空間の次元が9でなければなりません。これは、私たちの宇宙のように3次元が大きくなった宇宙には、6次元の小さな空間が付随しているということです。
6次元の空間というのは一般に非常に複雑で、数多くの異なる形を取ることができます。そして、これらのコンパクト化された6次元の空間の形が違う宇宙は、私たちのような6次元を直接感知できないような大きな観測者にとっては、素粒子の種類や性質、真空のエネルギー密度などが異なる宇宙として認識されるということを示すことができます。
つまり、超弦理論には、このように異なる宇宙を生じさせるしくみが組み込まれており、それは理論の無矛盾性から要求されているのです。また、このようにして得られる宇宙の種類はほぼ無限に等しく、さまざまなバリエーションの宇宙が存在することがわかります。
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