【国内・海外承認薬一覧付き】がん細胞に侵入し内側から破壊する最新抗がん剤「ADC」はどれくらいすごいのか?《仕組みをわかりやすく解説》

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開発の状況についてはどうなのだろうか。

ADCは2000年のマイロターグ承認後、開発は一時的に停滞していたが、2010年以降に再び活発になり、特にここ5~6年で承認が急増している。

これまでに400以上の臨床試験が行われ、世界ではうち18製品が承認。国内では2025年4月時点で12製品のADCが承認されている(最新のACDの種類と承認については、文末の表を参照してください)。

清水医師が所属する新薬開発科では、製薬大手が主導する国際共同治験が多数進行している。その中でADCが占める割合は決して小さくない。

ちなみに、清水医師が専門とするのは、新薬の安全性や適切な投与量を確かめる重要なフェーズである、がん新薬の第1相試験だ。複数の国で共同して第1相試験を実施する国際共同First-in-Human(ファーストインマン)治験などを含む。

これまで日本で課題となっていたドラッグロスやドラッグラグ、つまり欧米に比べて遅れがちだった国内の承認や開発研究も、近年は迅速化が進み、改善傾向にあるという。

第1選択薬になる可能性も

最後に、今後のADC開発の課題と展望について清水医師に聞いた。その1つが効き方に個人差があるという点だ。

「血液がんと違って、固形がんは一般的に、同じがんでも標的となる抗原の発現量が細胞ごと、転移病巣ごとに異なる『ヘテロジェナイティ(不均一性)』があります。そのため、患者さんによって治療効果が変わるだけでなく、同じ患者さんでも効きやすいがん細胞とそうではないがん細胞があります。それにどう対応するのかが、1つの課題です」

膵臓がんや胆道がんといった難治がんへのADC開発も、課題の1つ。

これらのがんは、乳がんや胃がんのHER2のような、キーとなる標的(抗原)の多くがまだ明らかになっていない。患者数が少ないため臨床試験が行われにくいという背景もあり、開発が進みにくい。

だが、現在は、同じような分子レベルの異常を持つ患者を、がんの種類に関係なく集めて行う「バスケット型試験」や、がんの発生部位を問わず同じ遺伝子異常を持つ患者を集める「臓器横断的コホート」治験が行われている。

こうした枠組みを通じて、分子レベルの異常が一致する患者に合わせた個別化医療としての開発が進む。

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