【国内・海外承認薬一覧付き】がん細胞に侵入し内側から破壊する最新抗がん剤「ADC」はどれくらいすごいのか?《仕組みをわかりやすく解説》

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これについて佐々木医師は、「治療を受けられる対象が広がった」と喜ぶ。また、この理由の1つについて清水医師は、「標的が多く出現しているがん細胞の周囲にあるがん細胞にも作用する『バイスタンダー効果』が寄与している可能性がある」と分析する。

また、ADCのカドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)は、乳がんの手術の効果を高める併用療法(術後補助化学療法)として認められた。ステージⅣの乳がんに対する全身治療だけでなく、もっと早いタイミングで使えるようになったのだ。

乳がん以外にも、一部の膀胱がんの3次治療でパドセブ(エンホルツマブ ベドチン)が使われ始め、一部の肺がんでも有効性が示されたという。乳がんと同じく、HER2の発現が見られる胃がんにも適用が広がりつつある。

安全性は高いが課題も

さらにがん患者にとってありがたいのは、ADCは必ずしもがん診療連携拠点施設だけでなく、がん治療を行っている医療機関であれば、基本的にどこでも受けることができる、という点だろう。

一方で、がんの薬物療法で最大の問題となるのは、副作用だ。ADCもがん細胞に集中的に効かせられるとはいえ、副作用がないわけではない。

清水医師は「がん細胞を標的として強力な薬剤を送り届けるため、従来のがん薬物療法とはまた違った特徴の副作用、もしくはADCが搭載している抗がん剤(ペイロード)に起因した副作用が表れることがある」と話す。

ADCの副作用の約半数以上が「オフターゲット副作用」、つまり、標的となるがん細胞以外で生じる副作用で、血液毒性(白血球減少、好中球減少など)、消化器症状(嘔吐や吐き気、下痢など)、肝機能障害などが見られると、清水医師は指摘する。

「特に今、問題になっているのは、ADCによる薬剤性肺障害による間質性肺炎です。重篤化のおそれがあるため、慎重な観察と対策が必要です」(清水医師)

佐々木医師も「ADCの副作用管理は重要です。がん治療を行っている医療機関であればどこでも受けられるとはいえ、使う医師の知識と経験が問われます」と強調する。

気になる薬価については、例えば、体重50kgの患者が1回に投与される薬品コストをみてみると、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボは約33万円、ADCのカドサイラは約41万円、エンハーツは約44万円なので、ほぼ同じといえる。

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