【国内・海外承認薬一覧付き】がん細胞に侵入し内側から破壊する最新抗がん剤「ADC」はどれくらいすごいのか?《仕組みをわかりやすく解説》

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がん新薬のフェーズ1試験に特化する国内有数の治験施設、関西医科大学附属病院新薬開発科。その教授である清水俊雄医師は、ADC開発の経緯を次のように語る。

「そのコンセプトはすでに1970年代から存在していて、最初の臨床試験は1980年代前半に行われました。2000年に承認された急性骨髄性白血病の治療薬、マイロターグ(ゲムツズマブ オゾガマイシン)が最初のADCで、2020年以降になってADCの新薬開発が加速しています」

薬物を積んだ誘導ミサイル

ADCは前述したように、がん細胞に直接、“強力な薬物”を送り込んで攻撃するのが特徴だ。清水医師は、ADCの仕組みを「薬物(ペイロード)を積んだ誘導ミサイル(抗体)」と例える。

誘導ミサイルががん表面の標的(抗原)を見つけ、抗がん剤を代表とする薬物ががん細胞の内部などで切り離され、がん細胞を破壊する。「この設計が有効性と安全性におけるカギ」(清水医師)という。

ペイロードに積む薬剤は、昔からある一部の抗がん剤だ。

これまで毒性が強すぎて、副作用などの問題が生じていた薬剤も、ADC技術の進化により、ごく微量(ピコモルレベル=1兆分の1モル ※モルは物質量の単位)でがん細胞に作用させられるようになった。

がん表面にある標的を見つけて、薬剤をデリバリーするのは抗体の役目だが、がん細胞に精密に薬剤を放出するリンカー技術の革新により、治療効果の最大化だけでなく、正常細胞への影響を最小化させることもできた。

「ADCは、理論的には“運び屋”としての抗体と、“仕事人”として低分子の薬剤、それぞれのメリットを併せ持った薬。かなり理想型に近い薬だと思います」と話すのは、がん患者の薬物療法に携わる北里大学病院集学的がん診療センター長・佐々木治一郎医師だ。

ADCのイメージ(画像:佐々木医師提供)
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