大M&A時代に突入、変わるスタートアップの出口戦略。「上場ゴール」はもはや許されない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
アクセラレーションプログラムの会場の様子
北海道で行われたアクセラレーションプログラムでは国内外のスタートアップを募集(写真:スクラムベンチャーズ・スクラムスタジオ)
市場改革の推進や株主の攻勢によって、日本の上場企業は大淘汰の波にのみ込まれている。『週刊東洋経済』6月28日号の第1特集は「上場企業クライシス」だ。
週刊東洋経済 2025年6/28号(上場企業クライシス)[雑誌]
『週刊東洋経済 2025年6/28号(上場企業クライシス)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

今年4月に示された東京証券取引所グロース市場の上場維持基準見直し案に、スタートアップ関係者が揺さぶられている。 

かねて、日本のスタートアップで問題視されていたのは「スモールIPO(新規株式公開)」だ。IPO時点の時価総額が数十億円にとどまり、IPO後も高い成長を実現する企業が少ない。むしろ、IPO直後に業績の下方修正を発表する「上場ゴール」企業が相次いでいる。東証が示した改革案は、そうしたIPOの目的化を許さないとの意思の表れだ。

5年で時価総額100億円以上という新基準は、スタートアップの出口(エグジット)戦略見直しにつながる。これまではIPOが圧倒的に多かったが、上場維持が難しくなれば選ぶ企業は減る。すでに2022年からの世界的な高金利でリスク資産への資金が細り、IPO件数は減少傾向にある。

M&Aが台頭

代わりに台頭するのがM&Aだ。時価総額100億円が基準になれば、ロックアップ解除後の株価下落も見据え、IPO時に200億円程度の時価総額がなければ主幹事証券に引き受け業務を行ってもらえないとされる。

そのため「今後は、企業価値向上のためにM&Aを繰り返すロールアップ戦略を組み込むことが当たり前になっていくだろう」と、フォースタートアップスの志水雄一郎社長は語る。

実際に同社のデータベースによれば、時価総額200億円以上のIPOと比べ、一定規模の買収によるエグジットのほうが近年増える傾向にある。M&A案件も大型化しており、今年は3月に米PEファンドのカーライルがカオナビを約500億円、5月にはLINEヤフーがBEENOSを538億円で買収している。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事