「男らしさ」が命を奪う?データで判明《男性が不調を放置しやすい》深層心理と社会の問題――再検査放置で手遅れになる男性の悲劇
さらに、労働時間が長いことが医療機関への受診を難しくしているという点もあります。
厚生労働省の「労働安全衛生調査(2018年)」によれば、調査対象となった事業所の25%に、月45〜80時間、5.6%に月80〜100時間、3.5%に月100時間超の残業者が在籍していました。終業後には医療機関の診療時間が終わっている、あるいは仕事が滞るので休めない、といった制約は、医療機関への受診を物理的に難しくします。
京都大学らの研究チームがフルタイムの男性労働者762人を解析した調査では、月間の労働時間が251時間以上(週約60時間超)のグループの月間受診回数は0.28回で、100〜200時間のグループの0.59回のおよそ半分にとどまりました。
一方で、市販薬やサプリメントに頼るケースは増えており、「時間がかからないセルフケア」を選びやすいことが示されています。
つまり、長時間の労働で自由になる時間が短くなると、その貴重な自由時間を割いて受診しようという気持ちになりにくく、医療を「後回しにせざるをえない行為」に変えているわけです。
東京大学が旅行業の従業員を対象に実施した職域コホート研究(2018年)では、職場健診で再検査を勧められながら3年間受診していなかった219人のうち、研究の基準を満たした男性従業員103人について解析すると、仕事の負荷(ジョブデマンド)が高い人ほど再検査に応じない傾向が確認されました。「忙しさ」そのものが最大の阻害要因であることが、データで裏づけられた形です。
男性が医療を受けるためには?
では、男性がきちんと医療を受けるためにできることはなんでしょうか。
まずは、医療機関を受診する際の時間的ハードルを下げることが効果的だと筆者は考えます。夜間・土日外来やオンライン診療が選択肢として増えれば、<就業中に抜けて行くか・行かないか>の二者択一から脱することが可能となります。
筆者が長年、遅い時間帯(立川パークスクリニックは平日20時まで)も診療し、オンライン診療システムを導入しているのは、これが目的です。実際、18時以降の時間帯は、男女とも勤めている方が診療の多くを占めます。
企業の取り組みも重要です。
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