「男らしさ」が命を奪う?データで判明《男性が不調を放置しやすい》深層心理と社会の問題――再検査放置で手遅れになる男性の悲劇
では、なぜ男性のほうが病院に行かないのか。
調べてみると、社会が男性に求める「伝統的な男らしさ」が、男性の健康・幸福・社会的関係に悪影響を及ぼす可能性があることが、心理学研究で明らかにされていることがわかりました。
この男らしさには「感情を抑える」「競争心を持つ」「成功に執着する」「自立を極端に重視する」などの価値観が含まれており、このような価値観が極端な形で内面化されると、以下のような結果をもたらすと、立命館大学産業社会学部の中村正教授は述べています。
・助けを求めることを「弱さ」と感じ、心理的・医療的支援を回避する傾向がある
・攻撃的行動やリスク行動(薬物使用、自殺、家庭内暴力など)に発展する可能性がある
こうした価値観は、社会的・文化的な刷り込みの結果です。
子ども時代から「男の子なんだから泣くな」「自分で何とかしろ」と言われて育つなかで、「助けを求めないことが美徳」として内面化されます。職場でも「休まない」「弱音を吐かない」男性が称賛されがちで、そうしたロールモデルが医療回避行動を強化していきます。
「怖い」から受診を遅らせる
一方、興味深いことにこんなデータも存在しています。
イギリスで実施されたオンライン調査では、61%が「深刻な病気と告げられるのが怖い」として、受診を遅らせると回答しているのです。
つまり、<弱音を吐かない=男らしい>という社会規範と、悪い知らせへの恐怖が二重に作用して、二次健診や精密検査の受診率を低下させているのではないか、ということです。
実際、アメリカ心理学会(APA)が2018年に発表したガイドラインの中でも、「伝統的な男らしさ」は助けを求める行動やセルフケアを抑制し、結果的に健康リスクを高めると、警鐘を鳴らしています。
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