「人を雇わず、レシピも無料公開」なのに…人気パン屋ドリアンの店主が”人脈と情報”を何よりも大切に考える理由

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さらには、はじめてのお客さんのご予約はお断りしていますが、常連さんには言われなくても取り置きしておく場合もあります。

ネット店がシュトーレン(ドイツでクリスマスに食べられるパン)の時期などで混み合っていて、メールの返信も遅くなり、パンの発送も待ってもらっているときでも、定期購入のお客さまには、優先的にメール対応して、決まった日にち通りにパンを送ります。

そもそも、一般的な経営コンサルタントが言うような、「客層を広げましょう」というようなものは、もう大昔のなんの役にも立たない言葉だからです。

ネットで、武具の兜の店が大繁盛しているとかいう時代です。いかにニッチな層のお客さんとしっかり深く付き合っていくかを考えるべき時代です。

パン屋で考えると、常連さんが300人いれば、じゅうぶんに豊かに暮らしていけます。定期購入のお客さんが150人いるので、店舗で150人常連さんがいれば、それでじゅうぶんです。何万人に告知するとかは何の意味もないのです。

お客というより、仲間

メディアの取材を受けるのは気をつけないといけないといわれます。新しいお客さんが殺到して、そのお客の潮が引いていったときに、大事なお客さんも一緒に引いてしまうからです。

『捨てないパン屋 手を抜くと、いい仕事ができる→お客さんが喜ぶ→自由も増える』
『捨てないパン屋 手を抜くと、いい仕事ができる→お客さんが喜ぶ→自由も増える』(清流出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

だからうちは最初から、取材は常連さんへ向けてのメッセージとして受けています。

日頃、店頭やメールのやり取りだけでは伝えられない、こんなこと考えて、こんなふうにパン焼いていますよ、ということを常連さんに知っていただいて、「ああ、私はこういう店でパンを買っているんだな」と、誇りに思ってもらえるような、そんな取材だと思ったら受けています。

「捨てないパン屋」とか「働かないパン屋」とかで取材を受けているのも、そういうことです。

だから、「こんなにパンの種類があって、こんなに美味しいですよ」という情報は流しません。店舗情報すらなくてもいいと思っています。だって、常連さんはそんなことはとっくに知っているからです。

常連さんはお客というより、仲間のように感じています。その期待に応えるためにパンを焼いています。

田村 陽至 ブーランジェリー・ドリアン店主

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たむら ようじ / Yoji Tamura

1976年広島県生まれ。祖父の代から70年続くパン屋の3代目。大学で環境問題を勉強。卒業後、北海道や沖縄で山・自然ガイド、環境教育について修業。その後、2年間モンゴルに滞在しつつ遊牧民ホームステイなどを企画。帰国後の2004年、パン屋を継承した。2012年には1年半休業してヨーロッパで修業し、店をリニューアル。2015年秋から一つもパンを捨てていない「捨てないパン屋」。研修生、見学者、コーチング生の夢を応援するのが趣味。2018年『捨てないパン屋』(清流出版)出版。2020年、岡山県蒜山に移住、1町の田んぼで無肥料無農薬の米作りもしている。

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