「人を雇わず、レシピも無料公開」なのに…人気パン屋ドリアンの店主が”人脈と情報”を何よりも大切に考える理由

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次々と、いろんなスタイルのパンが流行り廃れていくパン業界では、長く修業し、独立したときには、身に付けたものがもう見向きもされない古いものになっているかもしれません。そんな状況の中、長期間、修業を兼ねて安い給料で働いてもらうのは、酷だと思ったのです。

もっといい働き方を探す実験を兼ねて、今は人を雇わないことにしています。

ときどき、1カ月~数カ月間、無給の研修生がいたりします。今後スタッフを雇う予定もあるけれど、それは独立開業を目指す人限定で、1~3年の期限付きにしようと思っています。うちにしばられて何年もいるより世界を見てきたほうがいいからです。

僕は日頃、1人でこなせる量の仕事をしています。しかし、いったん働くスイッチを入れると、常に小走り、朝食は立って食べ、電話にはなかなか出られないという忙しさで仕事をしています(そのかわり労働時間は短いです)。

そんな状況下では、研修生がどんなに初心者であっても、仕事を手伝ってもらえるのは、心のそこからありがたいのです。

無給の研修生だからお金のやり取りは発生しません。

ここが大事なのですが、お金を払ったり、もらったりは、ある種の交換です。労働とお金を交換しているのです。ですから、雇うほうはお金を払っていると、働いてもらうのが当たり前になります。逆に働くほうはお金をもらっていると、働くのが当たり前になります。

ちょっとドライな関係です。

そこには感謝の気持ちが芽生えにくい。お金がジャマしているのです。

お金がジャマしていなかったら? 単純に、働いてもらうのは、ありがたくなります。お返しに教えてあげたくなります。働くのは当たり前でなくなります。目的と意欲だけが働く原動力になります。

そうなると、お互いの関係が、お金のやり取りから、技術のやり取りに変わるのです。

しかも、1人でやっていた仕事を2人でやるのだから、時間が存分にあります。2人分を稼ぐために仕事を増やす必要もありません。研修のために費やす、お互いの意欲と時間が、お金で雇用していたときとは劇的に違ってきます。

そうやって研修生として働いてくれた人たちが、全国に散らばって活躍してくれる。ときに「あそこの人気店、ドリアンで研修してたんですって〜」と、どこかの井戸端会議で主婦たちの噂になれば、それで僕はじゅうぶん満足です。

レシピの何倍も価値のあるネットワーク

ドリアンの研修では経験がなくても、3カ月もあれば、だいたいパンなんて、天然酵母、薪窯で焼けるようになります。

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