研修生にはもちろん、見学者でも「この人は志を同じくする同志だな!」と感じたら、レシピや情報を提供しています。すると、「無料でレシピを公開して不安ではないか?」と聞かれるけれど、実は、その出ていくもの以上のものをもらっているので、大丈夫なのです。
情報をあげる。すると、ちゃんともらえるのです。
パンのつくり方やパン情報だけでなく、その世代の流行や、地域性や、どこかのパン屋の裏情報だったり、いろいろ集まってくるのです。韓国出身の研修生からは、お母さん直伝のキムチづくりも教わりました。
情報や人脈が全国から集まってくるのは、レシピごときの何倍の価値があるだろう!
彼らは各地にバラバラと散らばった情報網になります。そして、僕も彼らの情報源の1つとなります。今までみたいに、上から下に伝えるのではありません。双方にじわっと伝わる感じです。網の目のようなイメージで、それぞれは自立した個人同士のネットワークです。
それぞれが活動して見聞を広め、情報交換して、ときに集まり、パッと散る。そんなことを繰り返して、全体として高めていく。そうすると、自分も相手もお客も得するのです。
うちの周りの、元研修生や、見学に来てくれた人々とは、そんな不思議なネットワークができています。
そしてそれは、損得勘定抜きにしても、志をともにできる、人生を豊かにしてくれる友になるのです。
常連さんのためにパンを焼く
うちは、公言していますが、常連さんをえこひいきするお店です。
なぜならうちのパンは、大きくて、固くて、甘くもないし、酸っぱいです。そんなパンの常連さんは、きっと「あんな酸っぱくて固いパン、どこが美味しいの? ○○のパンのほうがもっと美味しいわよ!」という、家族内や、友人や、職場内での、弾圧に耐え忍びながら、食べてくださっているのだと想像するからです。
だから、その想いに応えなければならないと思うのです。
そんなことなので、店舗で列ができていても、常連さんとは話し込んでもいい、という方針です。きっと、「なによ、待っているのに、不愉快だわ」と思ったお客さんもいるでしょう。
しかし、そのぶん常連さんには「あ、私は大事にされているんだわ」と感じていただけるのですから。
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