これは電波の干渉縞効果の悪影響だ。高度1メートルのような超超低高度を飛ぶ対艦ミサイルは、5キロメートル以上の距離ではレーダーでは見えにくくなる。ミサイルから反射してレーダーに戻る電波と、海面で反射した電波が打ち消し合う現象が生じるからだ。波形の山と谷の部分が重なって消滅するため、強い電波を当ててもミサイルは見えない。
同時に、全反射層の下にミサイルが隠れる事態も多発する。季節や天候によるが、海表面の上に高湿度の大気がたまることがある。その時、大気表面は鏡面となり、電波や光を反射する。夏の道路でよく発生する「逃げ水」そのものである。その下を飛ばれるとやはり探知不能となる。
照準、誘導も難しい
第2に、迎撃用の大砲の照準や対空ミサイルの誘導も難しくなる。レーダーでもよく見えず、至近距離まで発見できない目標に対してはそうなる。
大砲では狙いにくい。数秒後の目標位置にむけて照準するが、それが難しい。超々低空目標はレーダーからよく見えない。そのうえ、命中寸前の発見なので正確な位置、針路、速力データが取れないので将来位置の推測も甘くなる。そのうえでNSMのようにミサイルが蛇行や螺旋飛行をすると照準不可能である。
対空ミサイルでの照準は難しくはない。だいたいの位置に向けて発射すれば当たる仕組みであり、最近のタイプは発射後に目標の場所を教えれば自分で探しに行くようにできている。
ただ、ミサイルが目標を捕捉し追尾できるかの問題が生じる。ARHと呼ぶレーダー誘導方式は厳しい。縦横数メートルある軍艦のレーダーでも見つけにくい目標である。
それを直径20センチメートルの対空ミサイル用レーダーで見つけるのは荷が重い。IIRと呼ぶ赤外線画像誘導方式では条件は緩和するが、全反射層の下を飛ぶ目標は見つけられない。
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