防衛省が開発進める新世代砲「レールガン」の実力は? アメリカのレーザー砲、中国のレールガンと何が違うのか、実戦ではどうなのか

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第3に、信管の動作も期待できないことである。信管とは、砲弾やミサイルの爆発装置である。飛行目標の迎撃なら通常は電波利用の近接信管を使う。目標から5メートルくらいに近づいた瞬間に発火する部品であり、それで砲弾や対空ミサイルに充填した火薬を爆発させて目標を破壊、墜落させる。

これもうまく動かない。海面高度1メートルの目標となると手前で誤動作する。砲弾や対空ミサイルは高度10メートル以下の高さを斜めに浅い角度で目標に接近する。対空ミサイルの場合、その角度は探知に好適な約9度をとる。そのため目標の手前35メートルの距離で先に海面が5メートル以内となり誤動作を起こす。

新型信管もこの問題を解決しない。砲弾向けとしては高精度の時限信管があるが、第2で述べた理由から精緻な秒数設定は難しい。レーザー信管も高度1メートルでは現用品では確実動作はあやしくなるだろう。そのために研究を進めている新形式の二光路方式や海面上走査型が必要となる。

端的にいえば、お手上げである。従来技術では探知できず、照準できず、撃破できないのである。

新世代砲で解決可能なのか 

このような超々低空目標を迎撃するにはどうすればよいか。その対策の1つが新世代砲である。中国はアメリカ海軍のNSMミサイルと、それをまねたと考えられている日本の12式能力向上型への対策として軌道砲の開発を進めている。日米海軍も同様に将来登場する中国版NSMを警戒してレーザー砲とレールガン開発を進めている。

もちろん、第1の問題は解決できない。そのためには別にミリ波レーダーなどによる探知が模索されている。

ただ、第2の照準捕捉や、第3の信管問題は解決できる。わかりやすいのはアメリカのレーザー砲である。

まず、目標の将来位置や追尾をする必要はない。今いる場所をそのまま狙って照射すればよい。

当然だが、信管は無縁である。照射でミサイルを破壊するからだ。外殻は1平方センチメートル当たり500ワットから1000ワットのエネルギー量で、華奢(きゃしゃ)なセンサ収容部は100~300ワットで2秒から3秒で溶融穿孔(せんこう)する。センサそのものは1000分の1ワットから10分の1ワット、1秒でよい。

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