「リアル“ゴールデンカムイ”かよ」「カッコよすぎ」と話題の《伝説の阿仁マタギ》 “92歳の松橋吉太郎さん”が「毎日食べているもの」

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

各人が2日に1回など、松橋さん宅への訪問のローテーションを決めているらしく、結果、松橋さんは毎日お客さんを迎えることになるのだ。松橋さんは客人をもてなすために茶菓子や飲み物を常備していて、遅い日は17時頃まで、お茶っこを飲みながらおしゃべりを楽しむのである。

お客さんが帰ると松橋さんはすぐに風呂焚きをするのだが、風呂に入るタイミングでお客さんが訪ねてきたら、脱いだ服を着なおして迎え入れる。

「そこからまたいろんな話っこが始まる。俺がいると思って来てくれるのだから、俺は幸せだ

夕方組の客人にはマタギになるために移住してきた若い衆もいる。息子よりもうんと若く、松橋さんを「親方」と呼ぶ。

伝説のマタギ
若い衆にも慕われる松橋さん。この日は、マタギの後継者になるため関東から秋田に移住してきた岡本健太郎さん(31歳)が訪ねてきた(写真:筆者撮影)

男同士の“話っこ”はさまざま。まず、世の中のニュース。松橋さんは片耳が遠くなり、テレビのニュースも聞き取りにくくなった。だから、遊びに来てくれた仲間から新聞やテレビのニュースを教えてもらうのだという。

「1人でテレビを観るときは時代劇ばっかり(笑)。ニュースは友だちから毎日、教えてもらうほうが頭に入る。だから俺はこの年になっても世の中のことはわかっていると思う」と胸を張る。

老人クラブの総会長とは老人クラブのことを、集落の役に就いている人たちとは神事や年間行事の相談や段取り、マタギの若い衆には請われるままにマタギの座学、そしてお気に入りの武勇伝を身振り手振りで披露する。

19時半には就寝

最後の客人を見送って風呂に入り、17時から夕食を作り、17時半に夕食。徒歩3分のところに住む長女の栄子さん(61歳)からは「とにかく野菜を食べろ」と言われている。

好物のたまな(キャベツ)は肉と一緒に炒めて、ほうれん草はお浸しに。地元産の白米を炊いて、味噌汁も毎食作る。山から授かった獲物や渓流魚をさばき、山菜、キノコも下処理から調理。そして後片付けまで当たり前にやってきた松橋さんである。

マタギ衆のおすそ分けの鹿肉や熊肉の調理も手慣れたものだ。

とにかく家事全般を面倒がらずにこなす、松橋さんの家事能力の高さたるや。人生100年時代を自由に幸せに生きるために大切なのは、こういうシンプルな「暮らしの力」のように思う。

伝説のマタギ
男手1つで子どもたちを育ててきた松橋さん。料理はお手のものだ(写真:筆者撮影)
次ページ布団に入ったらすぐに眠れる
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事