松橋さんは40歳のとき、7歳下の妻・秋子さんを6年の闘病の末に亡くした。
長女10歳、長男8歳を抱えて、マタギ、林業、子育てに奮闘すること、十数年。子どもたちが独立して家から出てから、松橋さんはずっと1人暮らしを続けている。
今の季節は朝5時に起床。まず居間のソファで低周波治療器を腰にあてる。説明書通りならば1時間のところを2時間。腰痛がひどいからではない。
「俺はいろいろ動き回るから、1時間じっとあてていられないんだ。だから2時間(笑)。少しあてたら台所に行って、米を1合研いでジャーにスイッチ入れるだろ。それで戻ってきて、またあてる。ご飯が炊けたらまた中断。仏様に炊き立てのご飯とお茶と水っこあげて拝んでから、またあてる」
ここからじっくりと思いきや、このあとも松橋さんの朝のルーティンは続く。

92歳、男1人暮らしの「リアルな食事事情」
今度は自分の朝食の準備だ。再び台所に向かい、味噌汁と簡単なおかずを作り、お盆で居間に運んでくる。そして、ご飯を食べながらようやくゆっくりと治療器に腰をゆだねるのだ。
朝食後は9時頃までテレビを観たり、洗濯や掃除したり。それから散歩に出て、本家に立ち寄る。「1時間ばかり話っこしてお茶っこ飲んで」、自宅に帰ってくるのが11時頃。昼食は菓子パンか即席めん。手間がなく、量がちょうどいい。
「働いているときはなんぼ食べてもいいけど、今は食いすぎは絶対だめ」
健康管理は胃袋でする主義だ。
午後になるとマタギや山仕事の仲間、集落の友だちなど、毎日お客さんが訪ねてくる。事前に約束しているわけではなく、皆、アポなしで訪ねてくるのだという。もし駐車場に誰かの車が停まっていれば、遠慮して帰っていく。
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