“果物はなんでも健康に良い”は思い込み? 整形外科医が提言する「高齢者の骨折を予防するために食べてもいい果物」
この体内の余った糖質がたんぱく質と結びつくと、AGEs(エイジズ)(糖化最終産物)という老化物質をつくり出してしまいます。AGEsは分解されにくく、体の組織に蓄積されて、さまざまな悪さをします。例えば、血管にくっつけば動脈硬化の引き金になり、皮膚にたまればシワやたるみの原因となります。
もちろん、骨も例外ではありません。糖化が起きた骨は黄褐色(おうかっしょく)に変色し、脆くなります。正常な骨は白い色をしていますが、それが黄褐色になってしまうのです。
かつて手術をした際には、そんな糖化した骨をよく見たものです。高齢者の背骨の手術で、肋骨を取って移植したことがありました。その肋骨が黄褐色に変色していたのです。今なら明らかに糖化の影響だとわかりますが、栄養療法を知らなかった当時は、その問題点を意識することはありませんでした。
腱にも糖化による変色が起こります。指の腱鞘炎が進むと「ばね指」といって、曲げた指を伸ばそうとしたときに、バネのようにピンと跳ね上がるようになります。その手術をしたとき、やはり、高齢者の腱が黄褐色を帯びていました。
先ほど筋肉や骨の原料を確保することの重要性を述べましたが、もう1つ重要なのは、同時にこの糖化を防ぐ手立てを講じることです。つまり、食生活を見直し、糖質の摂りすぎをやめる。この2つが、「骨卒中」を防ぎ、元気で長生きするポイントなのです。

果物の糖でも油断は大敵
食に関心が高い高齢者のなかにはご飯やパン、麺類などの糖質を控えているという人がいます。もちろん、好ましい食生活といえますが、それにもかかわらず数値に改善が見られないケースがあります。
クリニックの患者さんにも糖質を控えているのに、中性脂肪の数値が高い人がいました。中性脂肪の材料となるのが余分な糖質ですから、ほかにも何か糖質をたくさん摂っていることが疑われました。
しかし、食事内容を聞いても、ご飯、パン、麺類は食べていないし、お酒も飲んでいないという答え。そこで最後にこう聞いてみました。
「じゃあ、果物は食べてない?」
患者さんは意外そうな表情を浮かべました。
「えっ、果物はダメなんですか?」
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