「仮設住宅で何もしないと、みんなおかしくなってしまう」、手縫いの技能で古着から半てんづくりに挑戦--そごう柏店「までい着」販売会までの足取りを追う

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その記事が新聞に掲載されるや、全国から佐野さんの元に小包が送り届けられるようになった。梱包を開けてみると、びっくりするような立派な着物がぎっしりと詰まっていた。佐野さんは感謝の気持ちで、毎日、梱包を開け続けた。

この着物を、飯舘村に伝わる半てんなどに作り変える仕事をしよう。とにかく、みんなで集まって仕事を始めれば、団地の中は明るくなるに違いない。佐野さんは、参加してくれそうな母ちゃんたちに声をかけ続けた。

「一緒に半てん作りしないか」という呼びかけに、母ちゃんたちが集まり出した。しかし、佐野さんには、絶対に参加してもらいたい意中の人がいた。菅野ウメさんだ。

ウメさんは80歳という高齢ながら、かくしゃくとして村では半てん作りから漬物作りまで何でも「名人」として通っている。そんなスーパーウーマンも、借り上げアパートからこの団地に1人で移り住んできていた。

「ウメさんが参加してくれれば、もっと人数は増えるし、いい半てんもできる。作り方を教えてもらえる」

佐野さんのウメさん宅通いが始まった。何しろ、同じ団地内のことだ。佐野さんは「ウメさん、いないかあ」と、玄関から声をかけた。しかし、ウメさんは、いつも部屋にこもりっ切り。熱心に話を勧めても、部屋から出ようとせず、「私はムリだよう」と力なく返事するだけだった。村にいたときには、あれほど元気だったウメさんは、まったく別人のようになってしまっていた。

夏も終わりかけて、空が高くなりかけてきた頃のことである。


■仮設住宅に入る前の村民の避難先状況

■仮設住宅に張ってある通院、買い物バスの予定表

(浪川 攻 =東洋経済オンライン)

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