「仮設住宅で何もしないと、みんなおかしくなってしまう」、手縫いの技能で古着から半てんづくりに挑戦--そごう柏店「までい着」販売会までの足取りを追う

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仮設住宅で何か仕事を始めたい--。福島市の松川第一仮設住宅団地の管理人、佐野ハツノさんはそんな気持ちを抱き始めていた。同団地に避難してから、1カ月が過ぎていた頃である。

「このままでは、みんな、おかしくなってしまう」

避難してきた飯舘村民の顔色がよくない。鬱々として、部屋にこもり切っている人たちも多い。このままの生活を繰り返していたら、取り返しのつかないことになる。佐野さんはそう考えた。 

仮設住宅団地は総じて高齢者の比率が高い。それには理由がある。典型的な農村である飯舘村では、2世帯、3世代同居の世帯は珍しくなかった。そして、「ジッジもバッパも農作業していた」。ところが、原発事故に伴う避難措置によって、村からの退去を余儀なくされた結果、村人は農業を断念せざるをえなくなった。新たな仕事先を見つけても、仮設住宅から遠く離れていため、借り上げアパートで暮らすしかない。アパートは狭い。もちろん、仮設住宅も手狭だ。村にいたときのような、複数世代同居生活は不可能だ。

働き盛り世代は、年老いた家族と離れて暮らすしかなかった。しかし、高齢者の健康は心配だった。その点、仮設住宅団地には同じ村民が大勢住んでいて安心できた。そこで、仮設住宅団地には高齢者世帯が多くなった。

飯舘村の仮設住宅団地は、福島市内のほか、伊達市内、相馬市内など7カ所ある。その中でも、松川第一は最も高齢者が多い。居住者の平均年齢は70歳を超えている。

そうした人たちも、村では畑仕事をしていたが、今は終日、何もせずにボーッとしている。昨年8月のお盆には、数人の高齢者が団地の片隅で立ち尽くしていた。佐野さんが近寄ってみると、「墓参りに村に帰りてぇ」と、見えるはずもない村の方向を眺めながら、涙を流している。

「村は遠くて、戻れないんだよう。我慢しようなあ」

佐野さんは、そう慰め、一緒に遠くを眺めて涙するしかなかった。

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