国策半導体ラピダス「薄氷の2027年量産化計画」。政府が追加支援、いよいよ実力が試される局面に

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ラピダスの看板
「2ナノ」製造だけでなく顧客支援にも課題が山積している(撮影:梅谷秀司)
ここ数年、好況に沸いてきた半導体業界が曲がり角にさしかかっている。『週刊東洋経済』5月10日・5月17日合併号の特集は「半導体 異変」。トランプ関税の影響や変調を来すAI投資の動きを追った。
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「まだ1合目に立ったところだ。楽観はできないが、一歩一歩確実に上がっていく」──。ラピダスの小池淳義社長は4月1日、目標として掲げる「27年量産開始」までの現在の進捗を「まだ1合目」と表現した。

この前日、最先端「2ナノメートル」世代の半導体の国産化を目指すラピダスに対し、経済産業省は最大で8025億円の追加支援を決定した。これで、2022年からの累計支援額は1兆7225億円に上る。

22年に設立されたラピダスには、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループなど国内の大手企業8社が出資する。23年から北海道・千歳市で工場の建設を始め、すでに半導体製造装置の搬入も完了した。今回の追加支援によって同社は、試作ラインの稼働や顧客向け設計キットの開発を行っていく。

巨額資金の調達の行方

この1年余り、ラピダスについて注目されてきたのは、量産までにかかる巨額資金の調達の行方だった。小池社長は4月1日の会見で、「今回の支援で、研究開発にかかる2兆円はおおむね賄っていける。量産に向けてはさらに3兆円くらいの資金が必要になる」と発言。量産までには総額約5兆円の巨額資金が必要になるという考えを改めて示した。

これまでに調達した1.7兆円余りの資金は、経産省が所管する独立行政法人であるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じ「研究委託」という枠組みで支援されてきたものだ。これらの資金の用途はあくまで「研究開発」が対象。民間の半導体製造受託企業として量産ビジネスを進める際には、従来の枠組みでの支援は受けられず、別の資金調達手段を模索する必要があった。量産のために必要な残り3兆円は別枠での確保が不可欠となっている。

そこで政府は24年末に「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定。AIと半導体分野に30年度まで計10兆円以上の公的支援を行い、今後10年間で50兆円超の官民投資を誘発する計画だ。その枠組みを通じ経産省が旗振り役となり、今国会で通称「ラピダス支援法」が成立した。

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