国策半導体ラピダス「薄氷の2027年量産化計画」。政府が追加支援、いよいよ実力が試される局面に

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「研究開発支援にかかる2兆円のうち、残る数千億円の金額を次の26年度に予算要求し、研究委託は終わる。その次のステップがラピダス支援法だ」と、経産省・商務情報政策局情報産業課の金指壽課長は説明する。

ラピダス支援法の実態は「情報処理促進法」の改正である。本改正によって、デジタル人材育成などを担う経産省所管の独立行政法人・IPA(情報処理推進機構)に、新たに3つの業務が追加される。その対象となる企業は公募で選定されるが、事実上ラピダスを想定した措置となっている。

追加業務の1つ目は「民間企業への出資」だ。原則として政府が直接民間企業に出資することは法律で禁止されているため、IPAを経由して出資を行う。経産省はこのスキームを通じて、25年度中にも1000億円をラピダスへ出資する見通しだ。

一方で、ラピダスの既存株主からの出資は現状でわずか73億円にとどまる。そのためラピダスは政府からの出資1000億円に加え、民間にも1000億円規模の追加出資を呼びかけている。小池社長は「ある程度メドが立ちつつある」と繰り返している。

2つ目は「施設・設備の現物出資」。現在、ラピダスが研究開発に使っている工場や装置などはNEDOの資産である。このままでは、量産ビジネスに移行する際にラピダスはその資産を買い取る必要が出てきてしまうため、IPAがNEDOから資産を取得、さらにその資産をラピダスに「現物出資」することで、買い取るための資金負担を緩和する狙いがある。

民間融資に政府が債務保証

そして3つ目が「民間融資への債務保証」だ。政府からの1000億円の出資や現物出資に加え、仮に民間からの追加出資がかなっても、量産までに必要な3兆円の資金調達に向けてはなお金融機関からの融資がカギとなる。そのため、政府がそうした融資に対し保証をつけ、民間からの融資を呼び込みやすくしようとしている。

ただし、この点については「不良債権問題で公的資金を投じられた過去も踏まえると、金融機関としても保証があるからといってやすやすと巨額の融資を行うことはないだろう」(慶応大学の土居丈朗教授)との見方もある。ある大手銀行が融資判断に向けて起用した半導体業界出身のコンサルタントは、銀行側に「『27年量産開始』というスケジュールは、現実的にみて達成困難。支援を行うのであれば、スケジュールの遅延もあらかじめ織り込んだうえで、最後まで腰を据えて付き合う覚悟が必要だ」と助言しているという。

本記事はダイジェスト版です。詳報記事は「東洋経済オンライン」のサイト上でご覧いただけます。

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石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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