もう1つの理由は、つくり手のモチベーション維持にある。料理は本来楽しむもの。しかも坂内は、味に惚れ込んでつくっているFC加盟者が多い。
それなのに、いろいろなものが出来上がって届き、「温めるだけの作業」になると料理じゃなくなってしまう。だから、あえて各店でつくるスタイルを続けているのだ。

「均一のラーメンがベストなのか?」という問い
そうなると難しいのは、味の統一だ。もちろんFCオーナーは最初に約1カ月間の研修を受ける。その際、「ここから下の味をだしてはいけない」というバーを教えるそうだ。
わかりやすいのは温度で、80度以下のものは提供してはいけない。理想は85度。85度は、レンゲですくって飲んだときに「熱っ」と感じる温度である。なぜかといえば、喜多方ラーメンはスープが多くく、脂が少ない。だから比較的冷めやすい。そして、スタートの温度が低いと、食べる間にどんどんぬるくなるからだ。

とはいえ、完璧な味の統一は目指していないそうだ。手づくりだからこそ味にばらつきはあるのが自然。
「本当に均一なものがベストなのか?」「ある程度の『ゆらぎ』があるほうが人間にとって自然で飽きがこないのでは?」
という問いが中原社長にはある。
「もちろん、一定のバーを超えた『おいしくないもの』は提供してはいけません。でも、豚ひとつとっても春夏秋冬で違う。夏は脂付きが悪くなり、冬は脂が多くなる。均一ではなく、そこを各店で調整していくことこそ自然ではないでしょうか」
均一化することで、「ホッとできる一杯」が実現しにくくなるのではないか? という課題感もある。中原社長にラーメンのつくり方を教えてくれた35年以上のベテランでも、「ずば抜けておいしいチャーシューができるのは1年に3回」といっているそうだ。
そんなふうにFC加盟者が、「今日はいいのできたわ」とにんまりする楽しみも、「ホッとできる一杯」につながるのではないかと感じている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら