「呑んだ後に最高」「80代のおじいちゃんも完食する」…店舗数を増やす「喜多方ラーメン坂内」。優しい味に隠された"攻めの戦略"が凄かった

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もう1つの理由は、つくり手のモチベーション維持にある。料理は本来楽しむもの。しかも坂内は、味に惚れ込んでつくっているFC加盟者が多い。

それなのに、いろいろなものが出来上がって届き、「温めるだけの作業」になると料理じゃなくなってしまう。だから、あえて各店でつくるスタイルを続けているのだ。

麺 茹で上げ
できたてへのこだわりと、つくり手のモチベーション維持のため、麺以外は各店舗で手づくり(写真提供:株式会社麺食)

「均一のラーメンがベストなのか?」という問い

そうなると難しいのは、味の統一だ。もちろんFCオーナーは最初に約1カ月間の研修を受ける。その際、「ここから下の味をだしてはいけない」というバーを教えるそうだ。

わかりやすいのは温度で、80度以下のものは提供してはいけない。理想は85度。85度は、レンゲですくって飲んだときに「熱っ」と感じる温度である。なぜかといえば、喜多方ラーメンはスープが多くく、脂が少ない。だから比較的冷めやすい。そして、スタートの温度が低いと、食べる間にどんどんぬるくなるからだ。

ラーメン
スープは80~85度で提供することが義務付けられている(写真提供:株式会社麺食)

とはいえ、完璧な味の統一は目指していないそうだ。手づくりだからこそ味にばらつきはあるのが自然。

「本当に均一なものがベストなのか?」「ある程度の『ゆらぎ』があるほうが人間にとって自然で飽きがこないのでは?」

という問いが中原社長にはある。

「もちろん、一定のバーを超えた『おいしくないもの』は提供してはいけません。でも、豚ひとつとっても春夏秋冬で違う。夏は脂付きが悪くなり、冬は脂が多くなる。均一ではなく、そこを各店で調整していくことこそ自然ではないでしょうか」

均一化することで、「ホッとできる一杯」が実現しにくくなるのではないか? という課題感もある。中原社長にラーメンのつくり方を教えてくれた35年以上のベテランでも、「ずば抜けておいしいチャーシューができるのは1年に3回」といっているそうだ。

そんなふうにFC加盟者が、「今日はいいのできたわ」とにんまりする楽しみも、「ホッとできる一杯」につながるのではないかと感じている。

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