「呑んだ後に最高」「80代のおじいちゃんも完食する」…店舗数を増やす「喜多方ラーメン坂内」。優しい味に隠された"攻めの戦略"が凄かった

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坂内の麺は加水率が約43~45%と高めで、一般的なラーメン(加水率28~40%)よりもうどんに近い特性を持つ。高い水分量により麺が消化しやすくなり、胃にやさしい仕上がりになっているのだ。

麺
加水率が高いため、もちもちとやわらかい食感の中太縮れ麺(写真提供:株式会社麺食)

坂内では、1988年の創業からずっと、この高加水麺を使っている。麺は、福島県喜多方市にある『曽我製麺』が製造。雪や地震で物流が止まることを避けるために千葉にも専用工場をつくり、両方で全国69軒、海外1軒分を賄っている。

季節によって必要とする水分量が変わるため、0.3~0.5%刻みで加水量、練り加減、もみ加減を調整。そのつくりたてがほぼ毎日、店に届くそうだ。

麺 茹で上げ
季節によって加水率を調整したつくりたての麺が、ほぼ毎日店に届く(写真提供:株式会社麺食)

こうした麺づくりのスタイルは、個人店では聞く話だ。けれど、チェーンでそこまでやっているところは多くない。なぜそこまでするのかは、社名である「麺食」に表れている。喜多方ラーメン最大の特徴が、この麺にあるのだ。

さらに、「ルーツを大切にしているからでもあります」と中原社長は付け加える。いったい、どんなルーツがあるのだろうか。

そば職人が見つけた「ひっぱりのある」味

中原社長の父で、創業者の中原明会長は、元々蕎麦職人だったそうだ。個人で蕎麦店を経営した後、さまざまな店での修業を経て国鉄の完全子会社「サンフーズ」に入社。うどん・そば店の経営に携わる。

数年がたち、国鉄がJRに切り替わる際に「新業態を開発しよう」という話が持ち上がり、「飽きないで小銭で食べられる味」として、学生時代によく食べていたラーメンライスを思い出した。

そこで、「日常食として週1回、せめて月に2、3回は食べられるおいしさ」を目標に掲げ、全国各地のラーメン店を探し歩いたという。

中原明会長
創業者の中原明会長(写真提供:株式会社麺食)

探し求めた「日常食として週1回、せめて月に2、3回は食べられるおいしさ」とはどんなものか。中原会長は「ひっぱりのある味」と呼んでいる。

一般的に、ラーメンは味の個性が強ければ強いほど、しばらく食べたくなくなる。そうではなくて、「また食べたい」「もうひとくちスープを飲みたい」と感じる設計がなされているという意味だ。

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