児童書ベストセラー作家が語る「苦手があるのは、伸びしろがあるということ」、親の小言より読書のススメ。「なんでも魔女商会」おすすめ4冊

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誰にだっていいところがあるんだよというメッセージを込めて作りました。「自分もこんなところがあるな。どんなことに気づけたら、変われるんだろう?」と考えてもらえたらいいなと思っています。

◆なんでも魔女商会『お洋服リフォーム支店』
転校してきたばかりのナナが、森の中でみつけたお店は、人間以外の生き物ならみんな知っている「なんでも魔女商会」。リフォーム専門店の店主は、シルクという名の魔女。コミュニケーションが苦手ですが、本当は優しくて、自分のことをわかってもらいたいという思いも持っています。お店にやってきたナナとだんだん打ち解けたシルクは……?

「なんでも魔女商会」シリーズは、毎回ゲストキャラがいます。そのゲストキャラのお悩みに応じて洋服をリフォームをしていくお話なのですが、『いちばん星のドレス』の巻では、「友達って何?」「私の素敵なところって何?」などをテーマにしました。

苦手なことを克服する物語といっても、できなかったことができたらおしまいではなく、自分の中で感じ方や見方を変えることで、前に進んでいけると思えることが大切だと思っています。

◆なんでも魔女商会『いちばん星のドレス』
今年も初雪のたよりがそろそろ届くころ、シルクのお店に雪の女王のクリスタがやってきました。どうしても今年のコンテストに優勝したいので、リフォームを頼みにきたのです。雪の女王が行くところはみんな寒くなってしまうので、ずっと一人で暮らしていて、笑いもしないクリスタ。シルクとナナはその心を溶かすようなリフォームを考えます。

魔女が主人公なら、その召使い猫は真っ黒の猫が定番。でも主人公の召使い猫コットンには、黒くない部分があります。85%しか黒くない猫であることに対してコンプレックスを持っているというコットンと主人公の出会いを描いたお話も作りました。

人気のあるキャラクターで、コットンが出てくる話が好きという子はたくさんいます。私の書くお話は、できないことができないままで終わるお話の方が多く、コットンも努力したら100%黒の猫になれるわけじゃないんです。

でも、物語の最初と最後では、コットンの心持ちが変わっています。私自身がすごくコンプレックスの多い人間なんですが、不思議と腐ることなく、なんとか明日はもっといい自分でありたいっていうふうに思ってきた性質なので、それがストーリーにも出ているのかもしれません。

◆なんでも魔女商会『85パーセントの黒猫』
100パーセントの完璧さでドレスを仕上げるシルクと、85パーセントしか黒くない魔女猫のコットン。きっと自分なんて召使いに選んでくれないだろうと思うコットンですが、リフォームのお手伝いや身の回りのお仕事は抜群に上手。100%の黒猫じゃなきゃと思っていたシルクも、一生懸命なコットンの姿に考えを変えていきます。


『お花のドレスのBプラン』というお話では、「よくないことは、よいことのタネ」という言葉を登場させました。良くないことが起こっても、それをきっかけとしていろいろ考えるようになれば良いことにつながる、という意味です。

だから、AプランでダメだったらBプランにすればいいんじゃない? と考え直す内容にしました。思っていたのと違うと思っても、「そこでできる限りのことをしよう。むしろおもしろいことになるかもよ」という、思い通りになることがすべてじゃないというお話を書きました。

◆なんでも魔女商会『お花のドレスのBプラン』
シルクの店にやってきた、テキスタイルデザイン魔女エマ。エマは、コンテストのために作った布をよごしてしまい、出場を諦めてしまいます。
同じときにお店にきた友達のナナも、この色は似合わないからと新しい服の色に挑戦しようとしません。ところが計画通りにいかなくてもうまくいくという経験を繰り返して、ふたりはいままでの考え方にこだわりすぎていたことに気づいていきます。

自分の中で嫌いだ、苦手だと思っていたことも、物の見方を変えれば、そんなふうには思わなくなります。いろいろなものをジャッジしていくとき、見方を変えればいいと思い至れば、他者に対しても寛容になれます。

だから、いま苦手があるっていうことは、その伸びしろがあるっていうことなんですよ。心の気づきで気持ちよく生きられるようになれば、それが一番です。

大人も共感する"癒やし"のシリーズ

このシリーズは、大人の人が読んでも「心が癒やされました」と言っていただくことが多いです。失敗したけれど立ち直っていくという過程は、大きくなっても変わらないのかもしれませんね。

大人の悩み事も、意外と子どもの悩み事と同じじゃないのかなと思う部分もあります。ぜひ親子で読んでいただけたら嬉しいです。

→次の記事:「もしルルとララが新宿でスナックを始めたら?」、作者・あんびるやすこさんが妄想する「大人になった」主人公の物語

【合わせて読む】
1回目:20周年の「ルルとララ」、人気作家あんびるやすこさん「親が買い渋るものより、親子で買いたくなる児童書を」。シニアにもおすすめの理由
2回目:累計380万部、20年続く児童書「なんでも魔女商会」「ルルとララ」ができるまで。子どもたちを夢中にさせる児童書とは?
なんでも魔女商会29 ナナのバッグのメタモルフォーゼ (なんでも魔女商会 29)
『なんでも魔女商会29 ナナのバッグのメタモルフォーゼ (なんでも魔女商会 29)』(岩崎書店)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
あんびる やすこ 児童書作家

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あんびる やすこ / Yasuko Anbiru

群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。

テレビアニメーションの美術設定を担当。その後、玩具の企画デザインの仕事に携わり、絵本、児童書の創作活動に入る。

主な作品に、『せかいいちおいしいレストラン』「こじまのもり」シリーズ(共にひさかたチャイルド)「魔法の庭ものがたり」シリーズ(ポプラ社)『妖精の家具、おつくりします。』『妖精のぼうし、おゆずりします。』(PHP研究所)「ムーンヒルズ魔法宝石店」シリーズ(講談社)「なんでも魔女商会」「ルルとララ」「アンティークFUGA」シリーズ(いずれも岩崎書店)などがある。

ホームページ:http://www.ambiru-yasuko.com

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