人生100年時代「スキルと人間関係に投資」だけでは乗り切れない…企業や政府が行うべきこととは
不健康な状態で、生き甲斐もなく、人間関係も乏しく、お金の面でも不安に苛まれながら90歳を迎える事態を避けたいと思えば、いま未来のためにもっと投資する必要がある。そのような投資がいまほど重要だった時代はなかった。私たちは老い方を変えなくてはならない。それを実行しようと思えば、大掛かりな「ライフ・シフト」を成し遂げることが求められる。
それは簡単ではないだろう。私たちの生き方を構成する要素、すなわち、社会規範、文化、政策、制度は、何世紀にもわたる人類の経験に基づいて形づくられている(すでに状況は大きく変わっているのだが)。変化がなかなか進まないとしても不思議でない。
企業と政府に認識してほしいこと
この点は、本書の執筆を後押しした第2の認識と関係してくる。長寿化の進展に対応するための変化を起こそうと思えば、システムそのものを変革することが不可欠だ。
『ライフ・シフト』で提唱した柔軟性のあるマルチステージの人生は、企業と政府が長寿化の新しい現実を受け入れなければ実現できない。『ライフ・シフト』では個人の行動に多くのページを割いたが、システムが変わらなければ、誰もが身動きが取れなくなる。
私は、いまの状況に苛立ちを感じずにいられない。政府や企業は、人工知能(AI)と気候変動に対応するために劇的な変化を起こす必要については活発に議論しているが、高齢化への対応に関しては、紙オムツと老人ホーム、そして引退年齢の引き上げの話題にほぼ終始している。
90代以降も健康で充実した人生を生きられる未来を実現したければ、いますぐに取り組みを開始する必要がある。そして、この課題の重要性に相応の真剣な姿勢で臨まなくてはならない。本書で詳しく論じるように、システム変革するべきなのだ。
本書でシステムの変革に光を当てることにより、長寿化がAIや気候変動と肩を並べる重要課題として認識されるようになることを期待している。それが自分たちが対応すべき問題だと、政府と企業に認識してほしい。
本書では、「高齢化社会」ではなく、「長寿社会」を実現するために必要なことを一通り示す。そのような社会を築いてこそ、『ライフ・シフト』で提唱した行動をひとりひとりの個人が実践できるのだ。
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