たしかにソニーとホンダは、ともに終戦直後に創業し、革新的な技術力を武器に、町工場から世界企業にまで発展していったことなど、共通項は多い。しかし、内部にいるデザイナーの口から、このような言葉が聞かれるとは思わなかった。
ただし、カーデザインの世界観という点では、差異もあったようだ。

「ホンダでは、クルマの形そのものにこだわっていたのに対して、ソニーから来たデザイナーたちは、『周囲の空気がどうなるか』まで考えていました。たとえば、ボディサイドにキャラクターラインを入れて、クルマをしっかり見せようとするより、シンプルで鏡面のようなサーフェス(面)に風景が映り込むほうが美しいのではないか、など。ある意味で目から鱗でした」(河野氏)
「余計なノイズを入れない」デザイン
スタイリングの方向性は一致していた。近年、クルマが本来持っていた美しさやプロダクトの魅力が失われ、装飾過多なディテールが目立つようになっていることを踏まえて、両社のプロダクトが持つシンプルな美しさを生かし、原点に返ることを目指した。
こうした流れの中で出てきたのが、デザインコンセプトの「オーバル」だった。キャビンをブラックアウトして、そのまわりをボディが包み込むような形とするとともに、ミニマリズムにこだわって余計なノイズを入れないことを心がけたデザインだ。

人気のSUVではなくファストバックセダンにしたことについては、プロポーションへのこだわりや、音もなく走り出すEVに似合う姿というほかに、あえて難しいところからチャレンジしていくという、いきなりF1に挑戦した1960年代のホンダを思わせる答えも返ってきた。「人のやらないことをやる」という、ソニーイズムを反映しているとも言えるだろう。
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