シャープの12年3月期は過去最悪の最終赤字に。“屋台骨“テレビの消沈で生存の岐路に

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 携帯電話は200億円の売り上げ下振れ要因。今期の携帯電話販売台数は900万台(前期比7.6%減)から800万台(前期比17.9%減)へ下方修正した。うち、9割が国内向けだが、「米アップル社の『アイフォーン』にシェアを奪われている」(同社)ため、従来型携帯電話の落ち込みを自社のスマートフォン増販でまったくカバーできていない。

液晶パネル事業は、1000億円の下振れ要因となった。内訳は、テレビ用の液晶パネルが約500億円分。自社「アクオス」減販以上に、外販需要の消沈が痛い。11年3月末まで全体の3割はあったテレビ用液晶パネルの外販は、同12月末には約1割に落ち込んだ。




液晶パネル工場


 片山幹雄社長の釈明は、皮肉の一言である。「当社が北米で60インチのテレビを必死で拡販した結果、北米の台数は大幅に伸びた。しかし、当社の価格攻勢にたまらず他のテレビメーカーが手を退きはじめ、液晶パネルの外販が低迷した」。

残りの500億円分は携帯端末用などの中小型液晶パネルだ。アイフォーンの席巻で、シャープがパネルを供給していた日系携帯電話メーカーも、販売計画を大幅に下回ったことが要因。加えて、亀山第二工場から11年中に出荷を予定していたタブレットPC向け新型液晶パネルも、立ち上げ時にトラブルを起こし、12年2月に供給時期が延びてしまった。

11年6月、シャープは事業構造改革を発表し、価格低下が著しいテレビ用大型液晶パネルを徐々に縮小し、スマートフォンやタブレット向けに仕向先を切り替える、と表明した。「これで業績のソフトランディングを目指したが、結果的に逃げ切れなかった」と、片山社長は報道関係者の前で声を落とした。

シャープの苦難はまだ続く。来13年3月期も間違いなく国内テレビ市場の回復は期待できない。携帯電話も、ここにきて外資系メーカー(アップル、サムスン電子)に対する劣勢が明確になった。

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