
NATO拡大と北極圏
さらに北に目を向けると、ロシアによる戦争が地政学的混乱を引き起こしていることはすでに明らかである。
ロシアの領土的レバンキズム〔訳注 「復讐主義」の意味〕を警戒したスウェーデンとフィンランドは、2022年5月にNATO加盟を申請し、フィンランドはその11カ月後〔2023年4月〕に加盟を完了した。これでスウェーデンが加盟すれば、ロシアを除くバルト海沿岸のすべての国がNATOに加盟することとなる〔訳注 スウェーデンは2024年2月に加盟を果たす〕。
こうしてNATOが拡大することで、ポーランドが主導する北ヨーロッパ同盟のようなものが誕生し、EU内におけるドイツの力が弱まる可能性もある。ポーランドは現在、2030年までにヨーロッパ最大の陸軍の創設をめざしており、ブレグジット後のイギリスと関係を深化させることに安全保障上の強い関心を持っている。
スウェーデンとフィンランドが最終的に中立政策を放棄したことで、北極圏における地政学的な緊張が高まっている。北極圏に石油、天然ガス、鉱物資源が豊富に眠っていることはかなり前から知られていたが、地球の気温上昇が始まるまでは、こうした資源の採掘は容易なことではなかった。
2010年代に入ると、ロシア、NATO、中国が北極圏での軍事活動を活発化させ、非武装化されたスヴァールバル諸島をめぐって摩擦が生じた。
1920年に署名された条約によって、スヴァールバル諸島にたいするノルウェーの主権が確立する一方、他の条約締約国50カ国〔訳注 2024年現在、締約国は46カ国〕は資源探査の法的権利を有することとなった。
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