南東ヨーロッパと北東ヨーロッパの地政学的領域では、ウクライナ・ロシア戦争をきっかけとして、ヨーロッパのトルコ問題をめぐる亀裂が深まっている。
ウクライナの防衛にとって決定的に重要な国であるトルコは、キーウに救助用ドローンを提供し、ウクライナがオデーサ港から食料を輸出できるようにモスクワと2つの協定を結んだ。
トルコはシリア問題で戦略的にも戦術的にも頭痛の種となっていたが、戦争が黒海周辺にも及んでいたことから、NATOにとってなくてはならない存在となっている。
しかし、対ロシア制裁を拒否して以来、トルコはNATOのならず者国家として振る舞う傾向もみせている。トルコはまた、エネルギー・ハブとして2つの顔を持ちつづけている。
2022年7月、EUがアゼルバイジャンとのあいだで、アナトリア横断パイプラインの天然ガス輸送量を倍増させることに合意したとき、非ロシア産天然ガス輸送におけるトルコの重要性がふたたび高まった。
しかし、ノルドストリームの爆発事故後、エルドアンはプーチンに同調し、黒海海底を通るトルコストリーム・パイプラインは、ロシア産天然ガスがヨーロッパに流入する際のきわめて重要な起点となるはずだと述べた。
その一方で、エルドアンはスウェーデンのNATO加盟を妨げる重大な障害ともなった。
NATO内の地政学的断層
予想どおり、黒海周辺でのウクライナ、ロシア両国の戦闘は、東地中海をめぐるNATO内の地政学的断層をさらに悪化させた。
トルコがNATOに貢献していることでつけあがったのか、エルドアンは、トルコ沿岸に近いギリシャの島々を武装化したギリシャを懲らしめると繰り返し挑発し、「時が来れば、ある夜突然やってくることもありうる」と宣言した〔訳注 これを受けて、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は、訪問先のフランスで、「法はわれわれの側にあり、われわれの主張は正当であると確信している。したがって、われわれは、ある夜突然われわれの島にやってくると計画している者たちが、正義と実権が誰の側にあるのかがはっきりする白昼にやってくることを期待している」と応じた〕。
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