この連載の第26回で述べたように、大田区の町工場の数は、4000程度である。それに比べると、このサイトの企業総数は1000倍だ。異常な数といわざるを得ない。中国の人口は日本の約10倍なので、さまざまな対象について量的な規模は10倍と考えれば大きな間違いはない。しかし、企業数が1000倍というのは、想像を絶する。
これほど多数の企業との取引は、ITが利用できるようになって可能になったことだ。サプライヤーについての詳細な情報は、取引のために必要不可欠である。どこにどのようなサプライヤーがいるか、取引の条件はいかなるものか、相手は信頼できる企業か、等々の情報が必要だ。そうした情報が得られなければ、一つの企業内でさまざまな経済活動を行わざるを得ない。これが垂直統合だ。経済取引を市場を介して行うか、企業内で行うかは、情報の利用可能性によって決まる。ITの進歩によって、膨大な数の潜在的取引相手との水平分業が可能になったのだ。
水平分業への条件として、通常指摘されるのは、モジュール化(一つの製品を規格化された小さな部品に分解し、複数の企業での生産を可能とする方式)だ。それが重要なことは間違いないが、潜在的な取引先の情報が容易に得られることも、水平分業化のために不可欠なのである。
膨大な数の競争者が存在するため、猛烈な競争圧力が働く。分野を絞っても、競争相手が数社でなく、数百社というオーダーになる。だから、利益が圧縮される。とくに、製造部門で得られる利益が薄められる。