明らかな「二日酔い」で出社してくる社員に給料を払う必要ある? "私生活"にはどこまで介入できる?

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「会社の対応に不備があった場合に会社の責任が問われるのはやむを得ないが、社員にも自己の健康はきちんと管理してもらいたい」というのが、多くの人事担当者の率直な意見でしょう。

これは、法律上も、もっともな意見です。社員には雇用契約上、自己の健康を保持する義務があり(これを本稿では「自己健康保持義務」といいます)、その不履行により業務に支障が生じている場合には、会社が必要な範囲で私生活に言及することができると考えます。

しかし、そもそも自己健康保持義務がどのようなものか、また自己健康保持義務を尽くしてもらうために会社がどこまで介入できるかについて理解し、労使双方が共通認識を持っていないと、トラブルに発展しかねません。

そこで以下では、自己健康保持義務がどのようなもので、実務上どのような点に注意しなければならないかを解説します。

「自己健康保持義務」とは

管理職の人が、部下から次のように言われたら、どのように回答するでしょうか。

「すみません、じつは昨夜から朝までスポーツ中継を観ていました。手に汗握る展開で、結局、一睡もせず応援してしまいました。ですので、今日は軽めの仕事をお願いします」

恐らく、「何を言ってるのか」「(寝不足の原因は)仕事とは関係ないですよね」「自己責任で、仕事はきちんとやってもらわなければ困ります」――。このような感じかと思います。会社としても、同じような反応を示すでしょう。

なぜ、このような反応に違和感がないかというと、雇用契約を締結している以上、社員には労務提供義務があるからです。労務提供義務を尽くすためには、当然、私生活においても健康状態を保持して、会社が指示した業務を誠実に履行してもらう必要があります。

ですから、上記のやり取りでも、会社はスポーツ中継を観ていたことを問題にしているわけではなく、私生活を理由に「仕事ができない」と言っていることを問題にしています。

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