写真家・ヨシダナギ、“東京脱出”の真相 島に移住して得た心の平穏と少数民族への熱情
「おじいちゃん、元気?って家にいったら、『ちょうどお前を観てた』って。YouTubeにアップされている過去の映像を観てたみたいです(笑)。私のインスタもチェックしていて、『この前はコタツの写真を撮ってたな』と言われました(アウトドアブランド「Marmot」とのコラボ作品のこと)」
このおじいさんとすっかり親しくなったヨシダナギは、農作業を手伝うようになった。オレンジに似た鹿児島名産の柑橘類「たんかん」が実る2月の3日間、収穫作業に勤しんだ。お礼代わりにたくさんもらったたんかんを、クライアントと親族に送ったそうだ。
今では、出張が決まる度に「また暫く家を空けます」と近所の人たちに挨拶に行く。すると、誰もが「いってらっしゃい」と送り出してくれ、島に帰った時には「予定通り帰ってきたね!」「あれ? 予定よりずいぶん帰りが遅かったね」などと家族のように出迎えてくれる。ヨシダナギは、「私が戻る日を覚えてるんだ!」と驚き、胸が温かくなる。
島にいる時は、集落の集会やお祭りにもできる限り参加している。そこで見る風景は、ヨシダナギを「ほっこり」させる。
「おじいちゃんが歌っているのをみんなでニコニコしながら見てたり、小さな子が踊っているのを見て、みんなで盛り上がっていたりする生活っていいなと。みんなで地域の人を見守っている感じが好きなんです。私のことも、ご近所さんたちが親のように気にかけてくれるから、ぜんぜん寂しくありません」
クラウドファンディングに寄せられた2000万円超
東京では人を恐れ、避けるようになっていたヨシダナギだが、屋久島での暮らしは、これまでにない感覚を彼女にもたらした。
「なにかあっても、島に戻ればリセットされるっていう安心感で、心がすごく穏やかになったんですよ。そのおかげで、どんな仕事にも前向きに行けるようになりました。それまでならちょっと構えてしまうような仕事でも、島に帰ればみんながいるからいいやって」
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