「低迷続く洋画」25年は盛り返す"これだけの根拠" 洋画離れの実態と、好転する要素を分析した
洋画には、ハリウッド大作などスケールの大きな物語が生み出すドキドキやワクワク感や、小規模な作品には世界の多様な社会や文化を映し出す魅力がある。それがいまの時代には、人々の生活や習慣との共通性による共感が弱くなり、洋画と観客の間に距離が生まれている。
加えて、コロナ禍の洋画供給が滞った時期に、アニメの話題作や邦画実写大作が、シネコンのスクリーンの半数以上を占拠し、それがその後の大作公開スタイルのデフォルトになったことで、アニメやハリウッド大作以外の小〜中規模の洋画の上映機会が激減している。
観客が洋画に触れる場が圧倒的に少なくなり、とくに若い世代が洋画そのものに興味関心を抱かなくなる負のスパイラルが加速している。
そんな状況のなか、今年の洋画興行はどうなるのか。映画ジャーナリストの大高宏雄氏は、ビッグタイトルが戻ることを考慮しながら、慎重に言葉を選ぶ。
「確かに今年は、昨年あった多くのシリーズものより、興行的に期待ができるワンランク上の作品が揃っている。『ミッション:インポッシブル』『ジュラシック・ワールド』『アバター』などの新作は、知名度および認知度の点で、洋画の最高クラスだ。
これらのタイトルは若い層も知っている。その点が、いまの興行の大きな拠りどころとなる。洋画の『復活』ということで言えば、まずこれらの作品がどの程度の数字を上げるか、見極めたい。
復調してきたディズニーも有名タイトルが並ぶ。課題は多々あるとして、これらの総合力が、洋画の現状を少しなりとも好循環させていく可能性が出てきたとは言えるかもしれない」(大高氏)
10億円ヒットの前に立ちはだかる5億円の壁
一方、前述の映連の発表では、洋画低迷からの復興の糸口として、多様なジャンルから10億円ヒットを安定的に生み出すことを掲げていたが、大高氏はこの積年の課題についてこう語る。
「10億円台の作品が平均して増えると、確かに洋画は盛り返しの機運ができる。ところが現状では、洋画には10億円の壁がある。いや、もっと事態は深刻であり、5億円の壁さえ厳然とある。ここを乗り越えるのは、いつも言うことだが、短期間では難しい。
ではどうするか。ひとつ考えたいのが、洋画の情報を多くの場、局面で広げていくこと。TOHOシネマズ系のシネコンでは、上映前の幕間にハリウッド情報を流すことも多い。地道な試みだが、重要なことだと考える。洋画のことを少しでも知ってもらうこと。知らなければ、何事も始まらない。
どういう形であれ、シネコン運営会社が映画館を足がかりに、洋画のデモンストレーションをする場を作ってもいい。前述の総合力とは、何も作品にばかり限られた話ではないと思う。もっともっといろいろな手立てが必要だろう」(大高氏)
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