「うつ病」の人が絶対やってはいけない"NGな行為" 周りの人が「がんばれ」と励ましてはいけない訳

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うつ病から脱出するには、過去にこだわるよりも、現在の自分を大切にしましょう。未来のことは誰にもわからず不安が伴うので、「今」がいいのです。

脱うつのトリセツ
『脱うつのトリセツ』(扶桑社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「今ここにいる」ことに意識を向ける瞑想法を「マインドフルネス」と言います。良い悪いという判断もなく、自分の呼吸に集中し、ありのままを受け入れることで心を落ち着けることができます。

気持ちが落ちそうになったら、ぜひ目を閉じて自分の呼吸に意識を向けてみてください。

禅の教えに、「自灯明(じとうみょう)」という言葉があります。自灯明とは、「自らをともしびとして、自らを拠り所にする」という意味です。

お釈迦様は、他人の考えや意見に左右されず、自分の考えを大切に生きなさいと教えてくれているのです。「今ここにいる」自分がかけがえのない存在であることに気づいて、自分をもっと大事にしてください。

北風ではなく太陽になって

なぜうつ病の人に「がんばれ」と言ってはいけないのか?

イソップ童話の『北風と太陽』は、北風と太陽が力比べのために、旅人の服を脱がせようとします。北風は強い風で服を吹き飛ばそうとしますが、風が吹くほど旅人は寒くて服を重ねて着てしまいます。

なぜイソップ童話の話をしたのかと言うと、うつ病の人に「がんばれ」と言うのは、北風と似ているからです。励ます気持ちで「がんばれ」と言っても、うつ病の人はすでにがんばっているのです。

「まだ、努力が足りないの?」
「私、もっとがんばらないと回復しないの?」

このようにプレッシャーを感じてしまい、「うつ病」が進んでしまう可能性が高いのです。

一方、太陽はどうでしょうか? 暖かな日差しで旅人を照らすと、暑くなった旅人は、自ら服を脱ぎました。太陽が旅人の行動を促したように、うつ病の人にも、自らが前向きになれるような言葉をかけてあげられるといいと思います。

「今まで大変だったね、無理しなくていいからね」
「急がないで、今のペースでいいよ」

うつ病と向き合っていることを肯定し、つらさをねぎらってください。

うつ病になる人は、性格的に何事にも一生懸命に取り組む傾向があります。「もっとがんばらないと」と治療に関しても自分を追い込みがちです。太陽の光のように、温もりのある言葉をかけられると、「これでいいんだ」と安心できますし、自分に自信を持てるようになると、自己肯定感が高まっていきます。

もし身近にうつ病で悩んでいる人がいたら、北風ではなく太陽になって、優しい言葉をかけてあげてください。

三浦 暁彦 日本精神神経学会専門医 一般社団法人三陽会理事長 おおかみこころのクリニック代表理事

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みうら あきひこ / Akihiko Miura

日本精神神経学会専門医。一般社団法人三陽会理事長。おおかみこころのクリニック代表理事。

1994年2月2日、神奈川県生まれ。研修医時代に寸暇を惜しんで仕事に打ち込むも、うつ病と診断されて休職を余儀なくされる。休職を経て、医師として復帰。2023年、一般社団法人三陽会を設立し、同年、東京・新宿におおかみこころのクリニックを開院。信念は「精神疾患で苦しむ人をなくす」こと。著書に『脱うつのトリセツ』(扶桑社)がある。

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