「ただ泣くしか…」うつ病になった精神科医の葛藤 がんばるほど無力感だけが大きくなっていった

なぜ医師はうつ病になってしまったのでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
残念なことに、自ら命を断つニュースが後をたたない日本。先進国(G7)の中で最も自殺死亡率が高い日本では、年間2万1837人(2023年)が自死を選んでいます。その原因・動機として最も多いのは、うつ病で4377人。自殺者の約5人に1人は、うつ病が原因なのです。
厚生労働省によると、現代でうつ病になる確率は、生涯で6.5〜7.5%と報告されています。適応障害などの「隠れうつ」の人を含めると、日本人の5人に1人が心の問題を抱えていることに。うつ病は誰でもなりうる病気なのです。
とはいえ、日本ではメンタルクリニックに行くことへのハードルがまだまだ高いのが現状です。「心が疲れていると感じたら、風邪の時と同じように、気軽に診察を受けられる世の中になってほしい」と願う、うつ病経験者の精神科医の著書『脱うつのトリセツ』より一部を紹介します。
「うつ病」になったお医者さん
現在、私は精神科医としてメンタルクリニックを開業しています。しかし、じつは私もうつ病を患った1人なのです。
私は大学卒業後、精神科医として懸命に働きました。ところが、うつ病を治す立場のはずの精神科医がうつ病になってしまったのです。
大学を卒業して、医師免許取得者に最初に与えられる身分が、初期臨床研修医です。2年間に及ぶ初期臨床研修医の期間は、身分こそ医師ですが現場ではただの雑用係。ベテランの看護師さんのほうがはるかに医療の知識があります。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら