東大の英作文"英語力だけでは解けなかった"背景 社会や国語、ニュースの知識が問われる内容に
さて、自分の経験という意味でもこの問題は広げられますが、もっとアカデミックな方向でもこの問題の解釈を広げることができます。
例えば、この「意見を言わないということは同意することを意味する」という一文を見て、「サイレント・マジョリティ(silent majority)」という言葉を思い出した人はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
サイレント・マジョリティとは、積極的な発言行為をしない一般大衆のことを指す言葉であり、政治に関する議論をするときによく出てきます。積極的に意見を言わない人たちは革新的な態度を取らず、保守的な態度を取っているということを揶揄するニュアンスで使われることもありますね。
マーケの視点でも考えることができる
また、マーケティングの世界でもこの言葉は登場することが多く、「商品に対してクレームを言ったり、改善策を言うカスタマーは少ないため、声に出さないけど多くの人が考えていること、つまり『サイレント・マジョリティ』のニーズを把握することが重要」だというように使われています。
「意見を言わないということは同意することを意味する、と考えないほうがいい。例えば自分がエンジニアだったとして、商品をよりよいものにしていくために、顧客からのクレームがないということはいい商品であることを意味する、と考えずに、意見がなくてもどこかに商品の改善点があるかもしれない、と考えて顧客からより入念なヒアリングを行ったほうがいい」というような話の展開をすることもできるわけです。
このように、「意見を言わないということは同意することを意味する」という言葉は非常に含蓄のある言葉であり、きちんと社会経験がある人や、きちんと勉強している人であればあるほど、この言葉について考えることができるのです。逆に、しっかり英語の勉強をしている人であっても、社会経験が乏しく、ニュースをあまり見ず、国語や社会の勉強を疎かにしている人であれば、解けない問題だったわけですね。
実際に東大生にも解答を作ってもらいました。「日本人はこの考え方が多い」や「いじめ問題を見逃す層が多い」というような論展開をしていました(実際の東大生の解答はこちら)
東大の入試問題は、このような「教養が必要な問題」の出題が多い傾向があります。非常に定義が曖昧な言葉を使うので恐縮ですが、ただのペーパーテストの英語の問題であるにもかかわらず、「人間力」があるかどうかが試される問題が出題されているのです。この傾向は来年以降も続いていくと考えられます。みなさんぜひ参考にしてみてください。
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