オーラル・ヒストリーで辿る村松岐夫の研究人生 ある行政学者が語る「戦後政治学の展開」50年

本書『戦後政治学の展開 機会と挑戦の50年』を手にして、まず「おやっ」と思ったのはサブタイトルでした。
「挑戦の50年」というのはまあオーソドックスな感じですが、「機会の50年」というのは珍しい言葉だな、と。
「機会の50年」とはどういうことか
そう思って読んでみると、研究者・村松岐夫(京都大学名誉教授)が多様な機会に恵まれ、それをいかしながら挑戦を繰り返してきた、その人生行路をたどることができる内容で、たいへん納得がいったところです。
村松さんは、私から見れば「巨匠」とでも言うべき遠い存在ですが、そんな彼が、どのようなプロセスを経て戦後日本を代表する行政学者となったのか、それを追体験できるのがこの本です。
実際、どんな「機会」があったのか。別の雑誌からも書評を依頼されたので、その時に、「機会」をキーワードにして本書に付箋を貼りながら読みました。
そこで語られる数多くの機会のなかで、私の印象に残ったいくつかのものをここで紹介したいと思います。
まずは、雑誌『レヴァイアサン』の創刊をめぐるプロセスについてです。この雑誌は1987年秋に発行され、2018年に終了となるまで60冊あまりが刊行されました。
この学術誌には著名な研究者が論文を載せており、この間に政治学、行政学を学んだ人であれば、彼らの見解を知るために折に触れて参照したのではないかと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら