「失敗ができない日本」が変わらなかった特殊事情 会社の倒産で経営者も自己破産に追い込まれた
海外では、融資に際してはきめ細かな財務チェックを行い、さらにその後のアフターフォローも当たり前になっているとされる。経営が悪化した場合は、金融機関がきめ細かなコンサルタントを行い、企業が経営破綻しない形で銀行がサポートするのが当たり前になっている。広義の意味での金融機関の役割であり、バンカーの責務ともいえる。
しかし日本の銀行の多くは、個人保証や担保に頼るあまり、本来企業が持っている資産価値やビジネスの将来性などに目を向けてこなかった。1990年代にバブルが崩壊したことも大きな影響を与えたのかもしれないが、国際的に見ても非常識な融資スキームが当たり前になっていたといっていい。
金融庁の監督指針改正で、経営者保証が厳格に
そんな状況の中で、2023年4月の金融庁の金融機関に対する監督指針改正によって、経営者に個人保証を求める手続きが厳格になっている。個人保証契約を中小企業に求める場合、その必要性を説明することを義務付け、銀行が説明した件数を金融庁に報告することも必要とした。経営者保証をつける際の手続きを厳しくしたわけだ。
この背景には、人口の高齢化などによる事業承継の急増や、起業の推進など経済の新陳代謝を促すためといわれている。ちなみに、金融庁による監督指針改正で、個人保証が大きく減少したかというと、実はそれほどでもない。
進展があったのは事実だが、抜本的な改正とはなっていないからだ。実際に、金融庁の「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」は、金融庁の監督指針改正が行われる4年前の2019年度上期から徐々に回復しつつある(「民間金融機関における『経営者保証に関するガイドライン』の活用実績」より、金融庁調べ)。
●2020年度……27.6%(101万4223件)
●2021年度……30.7%(74万8019件)
●2022年度……33.9%(82万7587件)
●2023年度……47.5%(115万8483件)
●2024年度上期……52.6%(上期のみ63万281件)
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